貸与制
司法試験に受かって、最初に思ったのは、「とりあえず、1年半は食いっぱぐれないな。」ということでした。
司法試験に受かるまで10年以上かかり、ろくに仕事もしていたなかった私にとって、修習生になって、勉強しながらお金ももらえるという生活は、ある意味、バラ色の生活でした。
今でも、同期とご飯を食べるときなど、「あの頃生活に戻りたい~。」などと言い合う事があるぐらいです。
でも、これからは、そういうわけにはいかなくなりそうです。
というのも、修習生がお給料をもらえなくなるからです。
司法制度改革の中で、司法試験の合格者は2000人にまで増えてきました。
今後も、毎年の合格者を増やしていく予定です。
合格者が増えたことで、弁護士の数が増え、それまで弁護士がいなかった地域や少なかった地域にも弁護士がいるようになりました。
その一方で、弁護士の就職問題も発生してはいます。
司法試験合格者が増えたことの是非はさておくとして。
司法試験合格者を増やすと決めたとき、「そんなに多くの修習生の給料を払うことはできない。」ということになり、いずれ、給料制(給費制と言います)をやめて、貸与制にすると決められました。
この給料制から貸与制への移行が行われるのが今年の11月からの予定なのです。
貸与制の大きな問題は、「修習が終ったとたん、みんなが、 (少なくとも)300万円ほどの借金を背負わなければならない。」ということです。
実は、修習修了者が背負う借金は、修習時代に貸与された分だけではありません。
今は、法科大学院(ロースクール)を卒業しなければ司法試験を受けることができません。
法科大学院に通うには、当然授業料が必要になります。
授業料以外にも、本代や予備校代、その他の生活費なども必要になります。
そういった必要なお金を賄うため、多くの人たちは奨学金をもらっています。
あるところで調べた話だと、奨学金をもらっているのは、合格者の2人に1人の割合で、もらっている奨学金の平均額は約300万円、多い人だと、大学時代にもらっていた奨学金を合わせ、1000万円を越える人もいるのだそうです。
単純に考えれば、修習を終った人の2人に1人は、いきなり600万円の借金を背負って、弁護士なり、裁判官なり、検事としてスタートしなければいけないわけです。
法科大学院を卒業しても、司法試験に合格する保証はありません。
当初、7割を受からせると言っていたのに、現実には受験者の3割程度しか合格できず、5年で3回という制限の中、合格できずに司法試験をあきらめなければならない人も出てきています。
がんばって司法試験に合格できたとしても、修習を終ると300万円程度の借金が上積みされてしまう。
「いや、弁護士になればそれぐらいすぐに返せるんだろう。」と思う方がおられるかもしれませんが、弁護士も就職難の時代で、そう簡単にはいかないようです。
ただでさえ、合格率が低くなったため、ちょっと頑張れば司法試験に合格できそうだとおもえる学生さんが、司法試験をあきらめ一般企業に就職するというケースが出てきています。
その上、試験に受かっても借金が増えるだけだとすれば、ますますあきらめる人が増えるのは間違いないと思います。
そんな状態が続いて良いものなのでしょうか。
大阪弁護士会では、この問題について、市民の皆さんと一緒に考える集会を、平成22年6月14日(月)午後6時から、大阪弁護士会館において行います。
少しでも興味を持っていただいた皆さんには、ぜひご参加いただきますよう、お願いいたします。http://www.osakaben.or.jp/web/event/2010/100614.php
この問題については、日弁連も考えています。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/kiyuuhiseiizi.html
興味を持っていただけた方は、ご覧になってください。