専門相談
4回目の登場です。
そろそろネタも尽きてきて、季節物として「暑気払い」という裁判官、弁護士の業界独特の夏場の宴会シーズンについてでも書こうかと思っていたところ、タイムリーにネタがとびこんできましたので、そのことについて書かせていただきます。
私達が依頼者の方や、相談者の方、ちょこっと知り合った方からよく、「ご専門はなんですか。」と聞かれます。
相談する方、依頼する方からすれば、自分の抱えている問題を上手に解決してくれる弁護士に依頼したいというのが人情でしょう。
少し前(ずいぶん?)に「離婚弁護士」というドラマがあったり、最近では「債務整理・過払いなら当事務所へ」といった宣伝をしている事務所があったり、労働事件や交通事故に力を入れている事務所があったり、弁護士の数が増え、他との差別化を図るために専門性を強調する事が増えてきているのは事実です。
ですが、一般論としては、弁護士は、すべての法律問題について扱うことができ、また、そのための研鑽も積まなければいけません。
ですので、「ご専門は?」と聞かれると、「何でもやります。」とお答えすることが多いです。
とは言え、世の中にある法律問題は多種多様で、一人の弁護士がそのすべてに精通することは事実上不可能です。
弁護士によって、得意分野とそうでない分野とが出てきます。
離婚や、債権回収、過払い回収や破産なんかは、ほとんどの弁護士ができますし、実際、やっていると思います。
ですが、例えば消費者問題でも投資被害やクーリング・オフなんかについてはよく知らないという弁護士もいます。
医療過誤なんかになると、専門的な知識や協力医さんとのつながりが必要で誰もができるわけではなかったりします。
「何でもやります。」と答えておきながら、実は、得意ではない分野があるわけです。
相談する側にしてみれば、わざわざ相談に出向いて、「その分野は、あまり得意ではないから別の弁護士に聞いてください。」なんて言われたら、いい気はしないでしょうし、時間を返せと言いたくもなるでしょう。
相談料を払っていれば、更に怒りは増幅されそうです。
(そんな場合は、相談料をいただかないという弁護士もいるでしょうが。)
誰か、知合いに弁護士を紹介してもらった様な場合は、照会される弁護士の方も、あらかじめどんな相談なのかを聞いておき、自分が得意ではない分野であれば事前に調べたり、その分野を得意にしている他の弁護士に教えてもらったり、場合によってはその分野を得意にしている弁護士を紹介したりできます。
ですが、弁護士会や自治体、法テラスがやっている法律相談だと、相談を受ける側の弁護士もどんな相談が来るかはわからず、相談をする側もどんな弁護士が相談を受けてくれるかわかりません。
そのため、相談に行ったはいいけれど、「その分野は、あまり得意ではないので別の弁護士に聞いてください。」なんてことが起こりかねないのです。
そこで弁護士会が考えたのが「専門法律相談」です。
消費者や少年事件、労働事件や交通事故、医療過誤、知財などなど、いくつかの分野を「専門分野」として、専門分野について相談したい人は、「専門家弁護士」に相談できるようにするのです。
「弁護士は、すべてについて何事かを知っており、何事かについてすべてをしっている。」というのが理想です。
どの弁護士にどんな相談を持ち込んでも、ちゃんと解決してもらえるのが理想です。
ただ、現実に、皆さんのニーズを考えれば、「専門家弁護士」による「専門相談」が受けられるようにすることは、弁護士の数が増えながら、広告などが制限されており、利用者側ではどの弁護士がどんな分野を得意としているかがわからない現状では、必要なことなのだと思います。
ちなみに、この「専門相談」のシステムは、実際に弁護士会や法テラスの法律相談を利用した方の意見を参考に考え出された物です。
弁護士会も、弁護士を利用しようという皆さんのニーズを考えながら、いろいろ頑張っているのです。
ところで、この「専門相談」のシステムですが、実際に始まるのは、来年度以降になります。
「専門」とうたうからには、その分野に精通した弁護士をそろえなければいけません。
「私はこの分野が得意だ!」という自己申告を信用したいところですが、万が一間違いがあると、弁護士を紹介する弁護士会の信用にもかかわります。
そのため、これから半年ほどかけて、弁護士会では専門相談のための研修会を行い、原則として、それぞれの専門分野の研修を受けた弁護士だけを「専門弁護士」として「専門相談」にかかわらせることにするのです。
「専門弁護士」として「専門相談」にかかわりたい弁護士は、これから半年間、ひたすら研修を受けることになるのです。
来年度には、皆さんが「専門弁護士」の相談を受けられるようになり、よりよい解決が得られるに、弁護士も頑張ります。