祝 新聞協会賞受賞
ノーベル化学賞に日本人二人の受賞が決まったとの報道と共に、大阪司法記者クラブ加盟の朝日新聞が、大阪地検特捜部証拠改竄疑惑の一連の報道で新聞協会賞受賞追加決定との報道がなされていました。
広報委員会の委員や弁護士会の役員を務めていた関係もあって、司法記者との付き合いはいつの間にか長くなりました。しかし、その間、大阪の記者が新聞協会賞を受賞したとの報には何度か接したものの、司法記者クラブの記者が中心の報道で受賞したとの報は久しくなかったはずです。
他の記者クラブも似たり寄ったりなのかもしれませんが、裁判所内にある司法記者クラブの部屋はさほど大きくありません。隣の部屋との境は薄い仕切り一枚。隣の声を聞こうとしなくても聞こえるような環境の中、加盟各社の記者が肩を寄せ合うがごとくひしめきあいながら、日々抜きつ抜かれつの仕事をされています。
ほんの少し?報道するタイミングが早いか遅いかに何の意味があるのか(公式発表の少し前に懲戒報道をする意味がどこにあるのか・・・これも朝日だったですね)、仲間内で表彰する新聞協会賞にさしたる意味があるのか、といった冷ややかな見方もありますが、今回の受賞は間違いなく受賞に値する報道であると思います。
検察は被害者の想いを代弁し、治安維持・法治国家として不可欠な組織です。日本の治安の良さは世界に誇るべきものといわれます。今回の報道がその検察への信頼を不当に侵害することにならないのか。どこまで書くのか、どのように書くのか。どこまで取材をするのか、しないのか。取材・報道に際しては、数々の問題に直面したはずです。多分、デスクや編集長らに怒鳴られながらも、夜遅くまで検察回りの取材や、原稿の推敲を続けられたはずです。
数々の課題を克服されて素晴らしいスクープをされた記者の皆様の活動に敬意を表すると共に、心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。
もっともお祝いだけではもったいないので、期待を込めてさらなる要望も少し。
証拠改竄疑惑報道はご承知の通り、その後、担当主任検事の逮捕、さらに上司である当時の特捜部長、副部長の逮捕と予想外の展開を示しています。
しかし、その報道は相変わらず検察関係者からの情報と称して、主任検事の供述と称する最高検のリーク情報があたかも事実のごとく報道され続けています。
検察の公式発表でない捜査情報を誰が流しているのか。公式発表できない情報を検察関係者がマスコミにリークする理由は何なのか。リーク内容は、供述調書等で確認はできているのか。裏取りは間違いないのか。裏取りできずに報道しているとすれば、村木事件の時の反省は生かされていないのではないのか。主任検事の調べに利益誘導や脅迫はないのか。主任検事の弁護人は取調べの可視化を検察に申し入れたのか。申し入れてないとすれば何故なのか。被疑者ノートは差し入れたのか。差し入れていないとすれば何故なのか。検察はなぜ取調べの可視化をしないのか。長時間の調べは問題ではないのか。自白を強要しているのであれば従前の取調べと同じではないのか。村木公判で破棄されたとする取調べメモを担当した6人の検事がすべて破棄したのは単なる偶然とは思えないが(破棄することを指示する者がいたとすればそれも同様に問題では)その点の捜査はどうなっているのか。最高検検事も、これまで自白の強要等をおこなってきたのではないのか。捜査は公正といえるのか。
事件の実態がわからず、詳細が不明であるため、的外れの疑問であるかもしれません。しかし、部外者として関心のある事項、疑問点は沢山でてきます。これらの疑問にも応えつづける報道を是非とも期待しています。
また、直ぐには難しいかもしれませんが、時機がくれば是非今回の報道について弁護士や弁護士会の対応をも含め総括できる議論ができれば幸いです。