給費制ふたたび。
	今年の6月2日付の投稿で「貸与制」について書かせていただきました。
	その続きみたいなものです。
	平成22年11月1日に改正裁判所法が施行され、給費制は廃止され、貸与制になりました。
	これにより、12月7日に修習が始まる新64期修習生の皆さんは、
	修習期間の生活費その他を自己資金でまかなうか、国に貸してもらう(貸与制)事になります。
	http://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/taiyo_siryo1.html
	ちなみに、今年の春から修習が始まった旧64期修習生の皆さんには
	毎月、給与が支給されています。
	同じ司法修習生であるにもかかわらず、
	ある人は給与をもらい、ある人は借金を重ねるという不思議な状況が生まれました。
	6月にこのお話をさせていただいたときより、
	修習生の就職状況は、さらに悪くなっています。
	今回、貸与を受ける新64期が弁護士として登録しようとする頃には
	今よりもさらに就職状況が悪くなっている事は確実です。
	元々、司法修習生に給与が支払われていたのは、
	「修習生に修習専念義務を課し、生活費を自ら取得する道を閉ざし、場合によっては生活基盤のない土地での生活を強いられたり、労働の権利を事実上制限されるなど、修習に伴う有形無形の負担を余儀なくされている」
	http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/yousei/dai21/21gaiyou.html
	事に対する補償的な意味合い含まれていたのではないかと思います。
	今回導入された貸与制は、
	無利子で、修習終了後5年間は据え置きで、10年以内に返還すればいいとされています。
	一見、普通の融資ではあり得ない好条件のように見えます。
	ですが。
	まず、5年間据え置きとされたのは、多くの修習生が法科大学院時代の奨学金の返済をしなければならず、その返済期限がおおむね5年以内とされていることから、同時に2つの返済をしなくてすむようにしようということから考えられたようです。
	また、無利子であるという点も、修習専念義務により労働の権利、機会を奪われ、自身の生活を成り立たせるためには貸与を受けなければならない事からすれば、それほど大きな利益だとは思えないのですがいかがでしょうか。
私達弁護士は、弁護士法1条において「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という責務を負っています。ですから、裁判官、検察官とともに、司法という国家制度の一翼を担う公的な存在であると考えていました。
「私達司法修習生は、司法という国家の支える制度の運用に携わる者として、そのために必要な能力を身につけるために1年間修習に専念し、修習が終了してからは様々な分野で広く公的な責任をはたします。ですから、その間、生活するために必要な分については、どうか国民の皆さんで負担してください。」というのは、虫がよすぎるお願いなのでしょうか?
	日弁連や、貸与制移行回避のために活動を行ってきたグループでは、
	まだあきらめていません。
	来年以降、給費制へ変更させること、
	5年後にすべての修習生が返還免除を受けられるようにすること、
	いろいろな目標を持ちながら活動を続けています。
	
	少しでも多くの皆さんに、この問題について興味を持っていただき、
	いろいろと考えていただければと思います。
