2010年11月14日 (日)

被告人からの手紙

刑事事件の仕事をしていると、ちょくちょく、被疑者・被告人から手紙をいただくことがあります。


民事事件の依頼者は、こちらと連絡を取りたければ、打合せ・電話・メール等々、いくらでも手段がありますが、身柄を拘束されている被疑者・被告人が、彼らの意思をこちらに伝える手段は主に手紙しかありません。


被疑者・被告人の個性にもよりますが、筆マメなタイプの方だと、かなり頻繁に手紙が来ます(経験上としては、女性の被疑者・被告人のほうがよくお手紙を下さるような気がします。)。
他愛ない話であったり、面会へのお礼であったり、公判への不安であったり、手紙の内容も様々です。


被疑者・被告人にとっては、弁護人は外部との唯一の窓口でもあるので、手紙を書くことが気分転換にもなるのかもしれません。


ただ、裁判係属中はかなり親密な手紙をくれていた方々でも、事件が終了すると、手紙はぱったりと途絶えます。
執行猶予がついて、外に出てこられた被告人の方に、判決期日の後日に入手した判決書を郵送したりしても、リアクションがないことが通常です。
当たり前といえば当たり前のことなので、特段、気にも留めていませんでした。


しかし、先日、初めて、事件終了後に被告人から手紙をいただきました。

守秘義務との関係上、詳細は書けませんが、手紙の内容の趣旨は、
「先生に弁護人になってもらえて本当に良かった。先生にも私の弁護をして良かったと思ってもらえるように、がんばって更正します。」
というものでした。


その被告人は、累犯前科がかなり多く、正直、検察官や裁判所の見る目は冷たかった事件だったのですが、それでも、被告人にこう思ってもらえたのなら、弁護人冥利に尽きるというものです。
被告人のこの言葉がどこまで真実かは正直わかりませんし、この先、10年、20年後に被告人がどうなっているかも確証はありません。
でも、もう、特別、手紙を書いてまでして連絡を取る必要がない関係になった(すなわち、被告人と弁護人という関係ではなくなった)後で、改めてこうして手紙をくれた、その点だけを取ってみても、少なくとも、この手紙を書いてくれた時には、被告人は心からそう思ってくれていたのだと思います。


刑事事件は、正直なところ、しんどいものです。
被害者がある事件ですと、示談をまとめて情状を良くすることが弁護人の責務ではありますが、被害者には煙たがられる存在です。
また、国選弁護人は、単独受任が原則ですので、事務所事件のようにほかの弁護士と協議しながら方向を決めていくということもできず、選択判断は全て自分の責任ということにもなります。
さらに、時間の制約があるので、迅速な行動が求められますし、被疑者・被告人と信頼関係がなかなか築けない時には、弁護活動はさらに難航します。


しかし、それでも頑張って被告人の心情を酌んで、(焼け石に水となろうとも)やれるだけのことを最大限やると、こういう、報酬にも代え難い気持ちにさせてもらえることもあるのだな・・・と、今更ながらしみじみと感じ入った次第です。

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