2010年2月12日 (金)

笑えない思い違い。

はじめまして。弁護士の齋藤優貴と申します。

 

先週の金曜日は、ある簡易裁判所で交通事故による損害賠償請求事件の第1回期日が予定されていたのですが、予期せずして期日前にお相手方から請求額全額を訴訟外で支払ってもらえることになり、訴えを取り下げたということがありましたので、その顛末をお話したいと思います。

そもそもこの事案は、契約者Aさんに生じた修理費用相当額の損害を、任意保険への加入がなく資力に乏しいお相手方Bさんに請求するという事案でしたので、当初から回収が見込みにくい事案でした。

当初、契約者Aさんの強い意向もあって、私は、Bさんに一括での支払いを求めましたが、Bさんはどうしても月々1万円ずつしか支払えないとのことでしたので、Aさんと打ち合わせのうえ、ともかくも訴訟提起して裁判所を交えて和解の話を進めよう、できるだけ有利な支払い条件を引き出そうということにしていました。

そして、先週の金曜日に第1回期日を迎えて裁判所でBさんとのお話し合いを進めるはずだったのですが、その3日ほど前に突如Bさんから私に電話がありました。

Bさん「最後に話してから全く連絡がありませんがどうなっていますか?」

私「すでに訴訟を起こしていますので金曜日に裁判所でお話させてください。訴状はすでに届いているはずです。Aと打ち合わせて、裁判所を交えて和解の話を進めたいということになったんです。」

Bさん「・・・。1万円ずつしか支払えない。」

私「・・・。でしたら、そういう風に裁判所で説明してもらえればいいので、とにかく金曜日には裁判所に来てください。そこで裁判所を交えてお話しましょう。」

Bさん「裁判所に出て行ったら、俺、捕まるんすか?」

私「( Д)y _ 民事上の責任として修理費用を請求しているだけですし、物損事故なので、刑事は関係ありませんよ・・・。

Bさん「・・・。」

私「とにかく金曜日には裁判所にお越しください。そこでお話しましょう。」

一度は納得されたようなBさんでしたが、その後、再び電話があり、「全額を一括で支払うから、とにかく金曜日は裁判所には行かない!」とのことでした。

本当に全額を一括で支払ってもらえるのかは疑問でしたが、支払ってもらえさえすれば文句はありませんので、ともかくも入金を待つことにしていたところ、本当に請求額全額の入金があり、全額の回収に成功しました。

どこでお金を工面されたのか、Bさんも苦労されたと思いますが、よほど裁判所に来ること自体に抵抗があったようです。

Bさんにとって、「交通事故の件で裁判」となれば、民事も刑事もごっちゃになってしまったのだと思いますので、過分に辛い思いをさせてしまったかもしれませんが、「裁判所に出て行ったら逮捕されてしまうのではないか」というBさんのご心配には正直驚きました。

人身事故にでもなれば、民事責任(損害賠償責任)、行政責任(免許停止等の行政処分)、刑事責任(自動車運転過失致死傷罪等による刑事処分)が生じ得ますが、一般の方にとってそれを明確に区別するというのは容易な話ではないということに改めて気付かされました。

 

ある国選弁護事件では、拘置所に勾留中の被告人から、「大阪地裁では、量刑が重いほど建物の上の階の法廷で審理されると同房者から聞きましたが本当ですか?同房者は4階の法廷で懲役〇年だったのに私は6階の法廷なのでそれよりも重くなるのですか?」と聞かれたことがありました。

そんな話さえも知識に乏しい人には真実味を帯びてしまうのかと驚いたことがありましたが、今回の件はそれに次ぐインパクトでした。

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