よくない知らせ
今年も暑い季節が到来しました。
毎年毎年、飽きもせず、定期的にやってくるのですから、ご苦労なことです。
先週の水曜日、今日はずいぶん気温が上がるなぁと思いながらデスクで仕事をしていると、外から戻ってきた事務員さんが事務所内に漂う空気の異常を感知しました。
事務所内の雰囲気が悪いわけではありません。
事務所メンバーの風通しが悪いわけでもありません。
事務所内の空気が生暖かい、いや、暑いのです。
どうやら事務所の業務用エアコンの調子が悪いようです。
急ぎリモコンの液晶を見ると、「L5」だか「LS」だか判別できない液晶表示が点灯し、何やら彼なりに必死に窮状を知らせてきているようです。
この季節、事務所のメンバーだけなら扇風機などでまだ何とか暑さを我慢できるかもしれませんが、事務所には相談者・依頼者が来られることもあります。
熱い打ち合わせならぬ、暑い打ち合わせでは業務に差し支えます。
慌ててメーカーの問い合わせ窓口に電話すると、電話口の方は「それは珍しい症状ですね…」と不穏なことを言い、こちらに何らかの覚悟を求めてきます。
その時点で覚悟の正体はわかりませんでしたが、幸いなことにすぐに点検に来てもらえることになりました。
点検の方がビルの屋上に設置されている室外機を点検した後、やや小太り丸顔で見るからに人のよさそうな彼は、神妙な面持ちを添えて報告に来られました。
その顔つきから大概の察しはつきましたが、案の定、大掛かりな修理になるとのことで、交換部品もすぐに取り寄せられるかわからないとのこと。
ひとまずできるだけ早い修理をお願いしてその場はお引き取りいただきましたが、人間、終わりの見えている苦痛であればまだ耐えられるかもしれないものの、その苦痛がいつ終わるかわからないことほど心身を疲弊させるものはありません。
これから数日どうなってしまうのか肝を冷やしつつも、体幹の温度は確かに上がります。
しかし、ここでふと思いました。
メーカーの方はその日の早いうちに点検の方を手配してくださり、点検の方も迅速にベストを尽くしてくれたのです。
暑いさなか屋上の室外機を長時間点検されるだけでも大変な作業です。
僕はあの神妙な面持ちで報告に来てくれた彼にちゃんと感謝できただろうか、お礼の気持ちをきちんと伝えられただろうか。
弁護士も依頼者にいい報告ができるとは限りません。
残念ながら、よくないお知らせ、悪い報告をしなければならないときもあります。
僕がまさにそうであったように、報告を聞いてがっかりされる依頼者もあるはずです。
いい知らせ、いい報告であれば、いつどのような形であっても容易にお伝えできるかもしれません。
しかし、よくない知らせ、報告は、伝える方もつらければ、聞く方もつらいのです。
ひとまずそれ自体はよくない報告であっても、その先にある展開や可能性を添えて説明することで事態を正確に把握してもらい、確かな希望をもってもらえるように工夫するなど、これまでも自分なりに考えてきたつもりですが、エアコンの故障というささいな事件に向き合ってすら狼狽した我が身と照らせば、さらなる努力が必要です。
業者さんと家主さんのご尽力もあり、幸い、今はエアコンの利いた事務所でこのブログを書いています。
弁護士としての成長をエアコンに誓います。
この誓いが破られた時、彼はまた「L5」だか「LS」だか判別できない液晶表示を点灯させ、僕に誓い直しの機会を与えるのでしょう。
希望へ
報告の方法、日々悩みますよね。
「希望を持ってもらえる工夫」は本当に大切だと思いますし、これからも努めていきたいです。
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