2016年12月14日 (水)

メンタルヘルスと「忠臣蔵」

 今年,某広告代理店で起きた出来事を上げるまでもなく,職場でのメンタルヘルスに対する関心が高まっている。一人の女性の悲痛な死が,会社を,社会の意識を少なからず変えたことは否定できまい。

 

 ストレスのせいで個人がその能力を発揮できないことは,本人にとって不幸なだけでなく,組織としての戦力喪失・機能低下につながるという意味でも深刻だ。従業員一人ひとりが過大なストレスを感じる就労環境が続けば,安定的な事業の継続はおぼつかない。下手をすれば組織の存続も危うい。

 

 それにしても,何で我が国はこんなにストレスを抱える社会になってしまったのだろう。
 心理の専門家によれば,人間関係によるストレスをいやすのは,受容と共感を基礎とした人間関係でしかないとのことだ。しかし私たちは,ともすれば,そうした人間関係が希薄な社会に生きている。

 

 高度情報化社会になって,思考や感情を表現したり伝えたりするツールがどんどん発展し,便利になっていった。就寝前につぶやいた,たった一言が瞬く間に全国全世界に知れ渡る時代だ。その一方で,プライバシーや情報機密の必要性が強調され,「伝えることと伝えないこと」に,より一層深い注意を向けざるを得なくなった。

 

 道具の進化に伴って,私たちの「『素の人間』としての伝える力」「道具を使いこなす力」も発達しなければならないはずだが,「伝えること」が容易になって,安易に「伝えること」ができるようになった分,その力は逆に退化してきているのではなかろうか。いつでもどこでも「伝えること」ができる社会の中で,伝えるタイミング,場面,伝える言葉の使い方,感情表現の仕方について,私たちは知らず知らずのうちに「へたくそ」になってきてはいまいか。

 

 私たちのコミュニケーション能力が低下したことが原因で,精神的ストレスが増大しているのだとすれば,現代社会の病弊の原因もなんとなく見えてくるような気がする。

 

 ところで,師走の14日と言えば「忠臣蔵」だが,浅野内匠頭が殿中で刃傷に及んだ原因については諸説あり,抑うつ状態による発作的な暴行だったのではないかという指摘もある。もともと不安定だった浅野の精神状態に,吉良との意思疎通不全が負荷となり,発作的行動を引き起こしたのだとすれば,その行動が結局赤穂藩300人の家臣の人生を激変させたことを考えると,改めてメンタルヘルスの重要性を思わざるを得ない。

 

ストレスとの付き合い方

心身ともに健康でいることの大切さを再認識しました。知らず知らずのうちに抱え込んでしまう…ということがないよう、自分なりの解消法で気長にストレスと付き合っていきたいものです。

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