日本の民事訴訟と米国の民事訴訟の違いをご存じでしょうか?

 

日本の民事訴訟と米国の民事訴訟の大きな相違点としては,

①陪審制であること

②懲罰的賠償があること

③ディスカバリー制度があること

です。

 

日本でも刑事裁判では裁判員裁判が一定の重大事件についてのみ採用されていますが,米国では刑事裁判のみならず,民事裁判でも陪審制を採用し,原告勝訴か被告勝訴か,原告勝訴の場合の救済内容(例えば損害賠償額)について原則として一般の方が判断します。

 

米国の裁判では恐ろしいような金額の支払を命じる判決が出るという話は聞いたことがあると思いますが,この原因の一つが陪審制にあると言われています。

つまり,一般の方は,法曹関係者と異なり「相場」勘は持ち合わせていないため,日本の裁判官であれば認めないような巨額の請求を認めるわけです。

米国の裁判での賠償金額が大きくなる2つめの原因として,米国では懲罰的賠償という制度があることが挙げられます。

懲罰的賠償というのは,被告をこらしめるために,原告に生じた損害よりも多くの損害の賠償を認める制度です(刑事でいう罰金のようなものをイメージして頂ければわかり易いと思います。)。これにより,ただでさえ高額な賠償金額がさらに高くなってしまう場合があります。

 

このように米国の民事訴訟と日本の民事訴訟には,陪審制や懲罰的賠償制度という違いがあるのですが,両国の訴訟制度の最も大きな違いはディスカバリー制度の有無です。

 

ディスカバリー制度というのは,簡単に言えば,訴訟が開始した直後に,裁判所の関与なく,訴訟の関連証拠について双方で開示しあう制度です。

例えば,原告の請求に関連する書面やメールは原則としてすべて相手方に開示しなければなりません。

また,証人を事前に尋問することもできます(この手続きをデポジションと言います。このデポジションの様子をビデオに撮るなどしていますので,証人が法廷でデポジションで述べた内容と異なる内容を証言した場合には,このビデオ等を陪審員に見せ,その証人の証言の信用性に疑問を投げかけるわけです。)。

 

このディスカバリー制度がある趣旨は,不意打ち防止と真実発見です。

米国人は,審理の場において,突然相手から知らない事実を主張されることを不公平だと考え,事前にお互いの手の内をさらした上,審理の場でお互いの主張を正々堂々主張しあうことを公平と考えています。

また,米国人は,ディスカバリー制度を通じて,お互いの書面を開示し合えば,より真実に近い妥当な結論が出ると考えています。

 

私も米国の訴訟制度について勉強を始めたのは弁護士になってからですし,まだまだ訴訟の本質というものを理解しているとは決して言えませんが,白黒をはっきりつけたがる理系気質の僕には,米国のディスカバリー制度は非常に理に適った制度に思えます。

 

このディスカバリー制度によって,訴訟当事者はお互いの手の内をさらけ出すことになりますので,自分の弱み・強みがわかり,和解が成立しやすいとも言われています。

ある統計によれば,提起された訴訟の98.6%が和解で終了し,トライアル(日本でいえば,法廷で証人尋問などを行った上で判決を下す手続)にまで到達した案件の割合は提起された訴訟全体の1.4%にすぎないとのことです。

 

米国の民事訴訟においてトライアルまで到達することは稀であり,米国の弁護士ですらトライアルはそうそう経験することはないのですが,このトライアルを経験して,かつ勝訴した経験を持つのが弊所の所長岡田春夫です。

 

ただし,ディスカバリー制度もメリットばかりではなく,デメリットもあります。

ディスカバリーでは,相手方に提出しなければならない書面と提出する必要がない書面を弁護士等が選別しますが,この選別には相当な時間がかかります。

そして,米国の弁護士(特に被告側)は,タイムチャージといって時給制で働くので,時間がかかればかかるほど弁護士費用が高くなります。

この結果,米国の弁護士費用はディスカバリー制度のために巨額となっています。

これもある統計結果ですが,米国では第一審終了まで弁護士費用だけで700万ドルから800万ドルが必要になると言われています。

今のレートが大体1ドル83円程度ですから,約6億円前後になります。

これは弁護士費用だけですので,敗訴した場合,被告は,原告に対して判決で認められた金額をさらに支払う必要があります。

 

以上のように,米国と日本の訴訟手続には様々な違いがあります。

これはあくまでほんの一例ですが,日本企業は大企業,中小企業を問わず海外への進出をこれまで以上に真剣に取り組んでいく必要があると思いましたので,一助となればと思い,今回のブログはこのような内容とさせて頂きました。

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