民法上の準委任契約で原則可能

 

 

Q.私は先日、美容外科クリニックで脂肪溶解注射を受けました。雑誌の広告には「1本1万5000円」と出ていたのですが、実際に行ってみると「8~9本の注射を3回受ける必要がある」と言われました。

高すぎると思ったのですが、店員3人に長時間説得され、3回分のクレジット契約を結んでしまいました。効果には個人差があるとも聞き、やっぱりもうやめたいと思っています。キャンセルはできますか。

 

 

A.あなたの場合、自らクリニックに出向いて契約していますので、特定商取引法の「訪問販売」には該当しません。また、脂肪溶解注射は医師が行う美容医療であり、同法の「特定継続的役務提供」のエステティックサービスの定義にもあてはまらないと考えられています。このため、同法によるクーリングオフや中途解約はできないと一般的に解釈されています。

 

しかし、医師の治療契約は民法上の準委任契約とされており、委任者である消費者はいつでもキャンセルできるのが原則です。確かに、美容医療の契約には消費者側がキャンセルできないとか、キャンセルするには高額の解約料を支払わなければならないとの条項があるのが通常です。

ただし、「消費者の都合による一切のキャンセルを認めない」とか「キャンセルする場合は受けていない注射料金の金額を支払わなければならない」などの契約は、消費者契約法により無効とされ、解約料が減額される可能性があります。

 

また、店員が長時間取り囲んで説得したことも問題です。あなたが店を出づらくなり、その結果困惑して契約を申し込んだ場合には、消費者契約法に基づいて6カ月間は申し込みを取り消すことができます。これにより契約は無効となります。

 

美容外科クリニックでの美容施術は、誇大広告や強引な高額契約のほか、効果が全く出ない、後遺症が残るなどの消費者トラブルが多発しています。それにもかかわらず、消費者保護のための法制度が極めて不十分な分野で、被害救済が難しいことが多いので、慎重に契約する必要があるでしょう。

    

 <回答・松尾善紀弁護士(大阪弁護士会所属)>

2013年11月30日 毎日新聞大阪版朝刊掲載

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