勇気
先日来,立て続けに,裁判員を経験された方の体験談をうかがう機会がありました。
前回の投稿で,大阪弁護士会主催のシンポジウムをご紹介しましたが(http://www.osakaben.or.jp/blog/posts/59/entry/586),裁判員経験者8人が参加された大阪地方裁判所主催の意見交換会も,傍聴に行ったのです。
裁判員を務めた後,「あんな経験,二度としたくない」と思われた方が,こういうイベントに参加されることは,まずないでしょう。
しかし,そこを差し引いても,経験者の皆さんが「貴重な経験」「ぜひ,皆さんに積極的な参加を進めたい」と口々にいわれたのは,うれしい驚きでした。
大阪弁護士会で,より良い裁判員裁判を目指して活動している裁判員制度大阪本部の一員として,めちゃくちゃ微力ながら裁判員裁判に関わっている私としては,お聞きしていて,鼻がシュンシュンする感じでした。
ところで,どちらの会合でも話題となったのが,検察官と弁護人の主張の分かりやすさです。
経験者の皆さんの感想は,ほぼ好評価でした。ただし,どちらがより分かりやすかったかといえば,検察官に軍配が上がったようです。残念。
裁判員裁判に向けた検察官の奮闘は,すごいものです。
内容には,いろいろ言いたいこともありますが,素直に尊敬しています。
そして,負けてられへん,とも思っています。
弁護人が,主張の分かりやすさで検察官に負けているということは,被告人の思いを,裁判員の皆さんにきちんと届け切れていない,ということにもなるので。
とはいえ,全国から組織的に集めた知恵を現場にフィードバックして,日々研鑽している検察官に比べて,基本的に一匹狼で立ち向かう弁護人は,楽じゃありません。
マンパワーも予算もケタ違いです。
それでどうするか,というと,弁護士会で知恵を集め,研修を行い,裁判員裁判で,検察官と互角に立ち合える弁護士を養成しようと,日々がんばっておるわけです。
さすがにもう,来年のことを話しても,鬼さんに笑われないと思いますが,年明け早々には,3日間ぶっ通しの裁判員裁判研修をやります。
研修の3日目には,マニアックなまでにディテイルにこだわった模擬事件を題材に(弁護士は凝り性が多いのです),大学生に裁判員を務めてもらって,模擬裁判も行います。
今年のお正月明けにも,同じく大学生を裁判員に迎えた模擬裁判をしましたが,「弁護人は何が言いたいのか分からなかった」など,なかなか厳しいツッコミをいただき,少し泣けます。
でも,より良い弁護活動のためには,大切なアドバイスです。
ところで,裁判所主催の意見交換会の後,傍聴していた記者さんの質問に答えて,経験者の方が話しておられました。
審理の最終盤,すべての証拠調べを終えて,弁護人が意見を述べる最終弁論の場面。「これからお手元に紙を配ります。でも,紙ではなく,ぜひ被告人を見てください」と言ったのが心に残った。弁護人の思いが伝わってきた。
勇気をいただきました。
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何かと気ぜわしい年末,風邪などひかれず,皆様,よいお年をお迎えください。