2016年7月13日 (水)

主権者教育、アレコレ

選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引下げられました。
18歳以上ということは、誕生日によっては高校生も選挙権を行使することができることになります。

7月10日には参議院選挙もありました。

そこで、学校現場においても「主権者教育」が必要となってくるわけです。

この「主権者教育」。いったい何をどうやればいいのか。

とても曲者。とても難しい。
学校現場において、なかなかに先生方の悩みの種のようです。

 

まず、「主権者教育」とはどういうことをいうのでしょうか。

素直に読めば「主権者を育てる教育」です。
では、どんなことをすれば、「主権者教育」になるのでしょう。
「投票に行きましょう」というだけでは、足りないのはなんとなく分かります。

何をどう判断して誰に入れたらいいのかわからないのに、単に行けと言われても無理だと思います。

 

こうして、まじめに考えれば考えるほど、「主権者教育って何?」「主権者教育って何をすればいいのだろうか?」という大きな疑問に直面することになるのです。

 

さらに、学校の先生には、大きな制約があります。
それは、「政治的中立性を維持しなければならない」という原則です。
ところが、「主権者教育」というのはその性質上、生徒に対して「自分の意見を持つように色々な角度から考えよう」という側面がどうしても含まれてしまいます。
しかも、生徒に分かりやすく伝えようとすれば、今、現実に起きている問題を取り上げるのがもっともイメージがわきやすく、分かりやすいのです。
仮に、このような授業をすると、生徒たちが「先生はどんな意見なの?」という疑問を先生にぶつけることが予想されます。
その時、先生が意見を言っていいのでしょうか?
……迷います。
意見を言わないと、説得力がなくなるし……かといって、意見を言えば政治的中立性が……。
このような迷いが生じるのであれば、こうした授業はしない方がいいということになるでしょう。
でも、このような生徒に考えてもらう教育こそ「主権者教育」ではないだろうか。

学校の先生はこのような葛藤の中「主権者教育」をしなければならないという非常に難しい立場にあります。

 

大阪弁護士会では高校生を対象とした出張授業を行っておりました。
そして、「主権者教育」こそ法を専門的に学んだ弁護士だからこそ、生徒に伝えられることがあるはずと思って、昨年頃から、多くの弁護士が積極的にかかわり、知恵を振り絞り、生徒達にも興味を持ってもらえて、かつ、決して的を外さない「主権者教育」のための教材の作成にとりかかり、その教材をもとに「主権者教育」の授業を既に実践しております。

 

授業をした学校は大阪星光高校、同志社香里高校、大阪府立三国ヶ丘高校、大阪府立金岡高校、大阪府立旭高校です。

 

 

今回は、その中から大阪星光高等学校の授業の報告を紹介したいと思います。
講師は、弁護士法人中央総合法律事務所の山本 一貴(ヤマモト カズタカ)弁護士です。

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先日、大阪星光学院高校に出張授業に行ってきました。
法教育委員会の活動の一つで、いろいろな法分野に関して高校生にわかりやすく説明することになります。
 
今回は、なんと母校への出張でした。
「うち」はおもっきりの男子校ですので、ピチピチ感はなく、
私が当時の高校生であれば、小テストが控える7限目に弁護士がきたとなれば内職に明け暮れることを思うと
それなりの不安もありましたが、意外とみんなしっかりと授業に参加してくれました。

「主権者教育」がテーマで、選挙にも近々参加できることから興味があったのかもしれません。
「主権者教育」といってもさまざまで、内容を堅苦しくしてしまわないように、
主に主権者になる前提として、「何かを決定し、実現する過程」を生徒たちの頭で考えてもらうこととしました。主権者になる意識付けといったところでしょうか。

一つの題材として、星光学院で話題になっていた「携帯電話の持ち込みを許可するという校則」を学校側に許可してもらうためには、
どのようなプロセスを要するのか、という身近な問題に置き換えて考えてもらいました。

生徒たちは、「携帯電話を学校に持って行き使用したい」という思いはあるのですが、「なぜそれが必要なのか」「校則とするために誰を交渉の代表とするのか」
「学校側へどのような必要性や許容性、妥協点を提示できるのか」といった具体的な要素、選挙でいうなれば「公約」をどのように成立させるのか、という点はあまり意識したことがなかったようで、ポイントを指摘してみると議論も闊達なものとなりました。
 
若い高校生と会話をすると、若返った気分を味わえるとともに、自分が年をとったことも感じてしまいましたが、聞いてくれた生徒達がなにかしら興味をもってくれると嬉しい限りです。
まさか自分が母校の教壇に立つとは思いもしませんでしたが、当時の恩師に盛り上がっていたね、といわれほっとしました。
 
弁護士 山本一貴

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山本先生、ご報告ありがとうございます。

いろいろとすごく重要なことがさらっと報告されています。
いい授業であったことが伝わってきます。

 

そして、生徒の反応もよかったようです。
また、今回は割愛させていただきましたが、主権者教育を実施した他の学校でも「様々な意見がありとても面白い」「みんな色々な意見を持っている」等好評だったようです。

 

「主権者教育、はじめました。」

 

 

興味のある方は是非、一度、大阪弁護士会までお問い合わせください。
(問い合わせ先:06-6364-1681 大阪弁護士会司法課 担当松本)

 

 

 

大阪弁護士会では、多くの弁護士が、もっと面白い、もっと分かりやすい主権者教育授業をしようと取り組んでいます。
そこで、大阪弁護士会では、どのような主権者教育をしていけばよいのか、学校現場の先生と一緒に考えるミニシンポを下記の通り開催します。
参加費無料。事前申込不要。飛入り歓迎。
皆さま、是非ご参加ください。

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シンポジウム「弁護士と考える18歳選挙権」

日時:平成28年8月18日(木) 午後2時から

場所:大阪弁護士会

内容:立命館宇治中高校教諭杉浦真理先生による基調講演 「主権者教育に求められているもの(仮題)」
同志社香里高等学校における弁護士による主権者教育授業報告
教師と弁護士各数名によるパネルディスカッション

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まだまだ、勉強することも多く、試行錯誤を積み重ねていますが、「主権者教育」をしていきたいと思います。

 

主権者教育

先日の参院選でも、18歳、19歳がインタビューを受けているニュースがよく流れていましたね。時流のニーズに応え、いち早く主権者教育を提供する法教育委員会の取り組みに感服です!

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