2014年5月26日 (月)

刑事弁護人のあり方

例の事件で,担当していた刑事弁護人がいろいろ言われているようです。

その中で気になったのが「弁護士は,黒いものも白いという,非常識なやつだ。」というような論調です。

果たしてそうでしょうか?そもそもの刑事訴訟のシステムが理解されていないように思います。

 

まず,刑事裁判では,起訴をした検察官の側で,起訴した内容について,証明する義務があり,証明しきれないときは,無罪になります。

ですので,弁護人は,「白い」と主張する必要がありませんし,せいぜい「黒ではない疑いがある」という程度でかまわないのです。

 

では,弁護人が「黒だ」と思ったときはどうするべきなのでしょうか。

被告人が自分のやっていることを認めている場合は「黒」であることを前提に弁護活動を行っても問題がありません。

被告人が自分のやったことだと認めていない場合はどうでしょう?「黒ではない疑いがある」という主張もできないのでしょうか?

私は,少なくとも,対外的には「黒ではない」事を前提に弁護活動を行うべきだと思います。

当然,検察官が有罪だと思うだけの証拠があるわけですから,検察官と同じ修習を行ってきた弁護士から見れば,有罪の判決が予想される場合が多いでしょう。

そういった予想などについては,法廷外で徹底的に被告人と話し合います。

検察官の立証の仕方,予想される主張,裁判所の認定の仕方,有罪の可能性,有罪になった場合の不利益などなど,いろいろと話をします。

ですが,絶対に,「認めた方がいい」とは言いません。

被告人にとって弁護人は,場合によっては,この世の中でたった一人の味方です。

「自分はやっていない。」と言っているのに,最後の味方が信じてくれない訳です。

その味方に裏切られるのは,あまりにもつらいと思うのです。

被告人が「私はやっていない」と言っているのに,それを信用しない,はなから否定する,そんな人に弁護してもらって,うれしいでしょうか。

 

理屈で言えば,弁護人は本人の不利に振る舞うような権限は与えられていない,ということになると思います。

でも,実際には,そんな理屈ではなく,情緒的な部分が大きい気がします。

情緒以前の制度的な当然のことだ,という考え方もあるでしょう。

 

なぜ,弁護士がいるのか,刑事弁護人を国費をつかってまでつけられることにしているのか。無駄なことなのなら,なぜ,わざわざそんな無駄なことを制度として設けているのか。考えてみていただけないでしょうか。これは,実は,憲法というものの問題でもあります。

 

考える材料としてもう一つ。

「やってないけど,どうせ有罪だろうから,認めてかまわない。」と言われたとき,弁護人はどうすべきなのでしょうか?

私の中で,明確な答えが出ていません。

 

よくまあここまで月並みなことを。

よくまあここまで月並みなことを。

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