今年の司法試験合格者数
9月8日に,今年の司法試験の合格発表が有りました。
司法試験や法曹養成とは直接関係が無い(と私は思っていますが)話題で耳目を集めましたが,予備試験組が合格者の1割を超えるなど,考えさせられることが今年も色々ありました。
その色々のなかで,合格者数について考えてみました。
昨年の司法試験の合格者数は,1810人で,前年より239人減少し,「1割も減った。」と話題になっていました。
法曹養成制度改革推進会議が平成27年6月30日付で発表した「法曹人口のあり方について(検討結果取りまとめ)」では,「1,500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ない。」「司法試験合格者数が1,500人程度の規模を下回ることになりかねない。」と行った表現があった事から,どれぐらい減少するのだろうと思われていたようです。
昨年合格の68期から,実務修習前に埼玉県和光市で2週間,事前研修が実施されるようになった事からも,司法研修所のキャパシティにあわせて1,500名程度に減らされるのでは無いか,との憶測もありました。
ふたを開けてみると,今年の合格者数は1850人で,昨年から40名増加しました。推進会議の取りまとめ発表自体が試験後であり,今年の結果には影響していないのだろうとおもわれます。
では,合格者数減は,このあたりで底を打ったと言えるのでしょうか?
推進会議が合格者の縮小に言及したのは,需要と供給のバランスが崩れている現状を受けてのものだと思われます。
裁判所の一般民事事件や破産事件が減少していることは,大阪の坂野真一弁護士が今年の2月頃から何度かブログで紹介されています。(ちなみに,そこであげられた数字は,私も所属委員会のMLで見たことがある物で,根拠のある物。)
推進会議は,「社会の法的需要に応えるために,今後もより多くの質の高い法曹が排出され,活躍する状況になることをめざすべきである。」
弁護士が増えても,潜在的な法的需要が顕在化することは無いのでしょう。
いわゆる「ゼロワン地域」は,公設事務所の設置などで今年の7月には解消され,弁護士へのアクセスが困難であることは,ある程度,解消されています。
弁護士数以外に「司法アクセス」を困難にしている事情があるのでは無いでしょうか。
いずれにしても,司法試験の合格者数がこれ以上増えていくことは,なさそうです。
もう一つ気になるのは,推進会議があげた1,500人という数字です。
この数字は,旧60期(平成17年合格)が,およそ1,500人だったことから,一つの基準として言われることが多いようです。ただ,その数字には,現実の需要等の分析など,何らかの根拠がなく,イメージだけ,「これぐらいじゃないの」という数字でしかないように思えます。だからこそ「司法試験合格者数が1,500人程度の規模を下回ることになりかねない。」という事にもなるのだと思います。
合格者数が減ったとしても,これまでの合格者増で弁護士業界が受けた影響は,しばらくは残ると思います。
あと,今回の合格者数を見て,今ロースクルーにいる人たちや,今後,ロースクールへの進学を考えていた人たちがどういう風に感じたのか,そのあたりが知りたいです。合格者が減ったことでさらに受験者が減るのか,それとも,就職が楽になりそうだとおもって増えるのか,この程度の減少では就職難に影響は無いだろうかと,やはり減るのか。
まだまだしばらく,生の声を聞かせて欲しいところです。
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