2010年5月25日 (火)

もう一つの正義

正義の反対は,悪ではなく,別の正義だ

クレヨンしんちゃんに出てきた言葉ですが,よい言葉です。

 

僕は,主として使用者側の労働事件を取り扱っています。

労働事件というと,やはり花形は労働者側の立場に立って戦うことで,使用者側は悪者扱いされがちです。

 

僕自身,大学生のころ,司法試験を目指していたときには「弁護士は弱い者の味方であるべきだ」と考えていました。

 

そんな僕が使用者側労働事件をやってみようと思ったのは,二人の弁護士との出会いがきっかけです。

両弁護士とも修習生のときに出会いました。

 

本名をお書きして,何かご迷惑をおかけするとよくないので,仮に,A先生,B先生としておきます。

 

A先生は,大事務所を率いておられる大先生です。

A先生は,自分がイソ弁(勤務弁護士。お給料をもらって働く弁護士)だったころ,公害訴訟を担当させられることとなったそうです。

 

その先生は,「公害訴訟の被告側などやりたくない。どうしてもやらなければならないのなら,事務所を辞める」と思ったのですが,その勤務先の事務所は,自分の大学の恩師に紹介してもらったので,自分勝手に辞めるわけにもいかず,恩師の了承を得るべく,恩師を訪ねました。

 

そこで,その恩師から言われた言葉は,「君のその発想は,小児病的だな」とのキツイ言葉。

 

恩師曰く,「訴訟とは,何が正しいのか,何が原因なのかを双方主張・立証を尽くして確かめる場ではないか。

それをやりもせずに被告側だからイヤだなどというのは間違っている。被告側なら被告側に立って,全力を尽くし,真実を見極めなさい

 

A先生は,その恩師の言葉で「やれるだけやってみよう」と思い,その訴訟に全力を尽くしたそうです。その結果,その訴訟は被告企業の責任は否定されたそうです。

 

B先生とは,就職説明会のときに出会いました。

その説明会で,とある修習生が「労働事件の使用者側を扱うことは正義に反するのではないか」とその先生に問いかけました。

 

その先生曰く,「労働者側にも正義はある。

だが,我々使用者側の弁護士にも正義がある。いわば,もっと大きな正義といってよい。

すなわち,一人の労働者が不満を抱いて声をあげたとき,それは一つの正義かもしれない。しかし,そのことで会社がつぶれたらどうなるか。会社には,その他大勢の従業員がいる。

会社の側に立って,会社の利益を守ることは,そのようなその他大勢の従業員の利益を守っていることにもなるのである

 

労働事件は,「ひとごと(人事)」の事件ですが,

「他人事」ではありません。

そこで働いている人の問題は,その人たちの家族の問題でもあるのですから,責任重大です。

その責任をかみしめつつ,お金では割り切れない「人」の問題について毎日考えています。

 

そもそも,僕が裁判官や検察官ではなく,弁護士になろうと思ったのは弁護士法1条1項に書かれている「弁護士の使命」に感動したからでした。

 

弁護士法1条1項

弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。

 

僕は,僕自身の正義を実現するために,これからもがんばっていこうと思います!

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