僕は,潰瘍性大腸炎患者です。

 

潰瘍性大腸炎とは,「主に大腸粘膜に潰瘍やびらんができる原因不明の非特異性炎症性疾患。厚生労働省より特定疾患に指定されている。」(wikipediaより)ものです。

僕は,潰瘍性大腸炎の診断が出てから5年,症状が出始めてから9年なので,それなりのベテラン患者だと言えます。

 

今回の記事は,僕の潰瘍性大腸炎患者歴のエピソード0をお送りしようと思います。

 

僕が自分の体の異変に気付いたのは,大学1年生のときでした。元からお腹が弱く,しょっちゅうトイレには行っていたのですが,このころ,便に血が混じるようになってきたのです。

ただ,当時の僕はまさに無知で,「椅子に座りすぎて,ぢになってしまったぜ」くらいにしか思っていませんでした。

 

しかし,司法試験の勉強が進み,試験に対するストレスも増すようになると,症状が重くなってきました。

模試の最中もすぐにトイレに行きたくなるし,血の量もまさに下血といった感じの量が出るようになっていました。

それでも,受験中の僕は試験勉強のことしか頭になく,「勉強中に死ぬなら本望」と思っていたので,病院には行きませんでした。

 

運良く,大学4年生のときに司法試験に受かり,ヒマが出来ましたので,病院に行くことにしました。

そこで,症状を伝えたところ,「大腸の内視鏡検査をする」と言われました。

 

「だいちょうのないしきょうけんさとはなんぞや?」とぼんやり聞いていたのですが,なにやら肛門からファイバースコープを入れて,親にも見られたことのない(っていうか,自分でもみたことない)大腸の中を覗いちゃおうという検査のようです。

 

思わずお医者様に「まじっすか」と問うたのですが,「まじっすよ」との答えが返ってくるだけでした。

 

大腸の内視鏡検査というのは,事前準備が非常に重要かつ大変です。いわゆる下剤を飲むのはもちろんですが,その量が2リットルあります。

水だって2リットルは一気に飲めないのに,その下剤は味のないスポーツドリンクのような味で,非常にまずい。

まさに解脱のための修行。

この場合,煩悩からの解放ではなく,宿便からの解放ですが。

 

僕は,1.5リットルでリタイアしました。「0.5リットルくらいばれへんやろ」と思ったので。

しかし,のちに,この0.5リットルのさぼりは,検査中に解脱しきれていない煩悩が大腸内に発見されたことにより,儚くもばれてしまいました。

 

さて,検査についてですが,この検査のことについて語るのは難しい。

あらゆる文学的技法を尽くしても記述しがたい不思議体験なのです。しかし,この体験について語らねば,今回の記事を終えることはできません。

 

まず,ファイバースコープを肛門から挿入されるときのこと。

みなさんは,新世紀エヴァンゲリオンというアニメをご覧になったことがあるでしょうか。

あのアニメの名シーンに,主人公のシンジに助けられた綾波レイが

「ごめんなさい。こんな時どんな顔すればいいのかわからないの」と言い,

それに対してシンジが

「笑えばいいと思うよ」

と答えた後に,綾波レイがすばらしい笑顔を見せるというシーンがあります。

 

ちょうど,肛門からファイバースコープを入れられるとき,

「どんな顔をすればいいかわからない」状態になります。

そして,徐々に深度を深めるにつれ,だんだんと「笑うしかない」状態になります。

ただ,少し違うのは,僕は綾波レイのような透明感のある笑顔ではなく,

照れと恐れの入り交じったニヤニヤ笑いだったということでしょうか。

 

内視鏡検査は,その医師の技術が重要です。

僕が検査して貰った医師は,腕が良く,ほとんど痛みはありませんでした。

ただ,腸をよくみるために,空気を入れながらスコープを進めていくので,お腹が突っ張る感じがします。これは非常に不快です。

「妊婦さんが赤ちゃんにお腹蹴られるのって,こんな感じかな?」と少しでも幸せを感じようとおもったのですが,やはり男はその心境に至ることは不可能なようで,ずっと不快なままでした。

 

モニターで,自分の大腸の中を見ることが出来るのですが,まさに前人未踏の秘境と言った感じで,人体の美しさ(もとい,僕の大腸の美しさ)に感動します。

しかし,病魔はそんな僕の美しい大腸をむしばんでおり,僕の目から見ても,大腸の壁がただれているのが分かります。

僕は,そのただれた大腸の壁をみて,これから,この病気と闘っていかなければならないと決意を新たにしたのです。

 

検査後は,栄養士さんから食事制限の話を聞きました。

しかし,話を聞くと,肉はダメ,野菜はダメ(食物繊維は腸のぜん動運動を促進するから)といった感じで,アドバイス通りにしていたら,ほとんど食べられるものがない状態でした。

そこで,医師に相談したところ,とりあえず,食べたら具合の悪くなるものを避けていればよいとのことだったので,現在も食事制限は全くしておらず,アルコールも飲んでいます。

ただ,辛いものだけは具合が悪くなりがちなので,避けていますが。

 

長くなりすぎたので,エピソード0はこれで終わりにします。エピソード1や2は,大して面白いこともないので,たぶん書きません(笑)

 

僕は軽度で,ほとんど日常生活に支障がないですが,重篤な症状に苦しんでおられる患者さんもいます。

世間の方々のこの病気に関する理解が深まることと治療方法に関する研究が進むことを祈念しつつ,筆を措きます。

はじめまして

原先生 はじめまして。
私は、現在司法試験受験準備中の学生です。
本日、「腸、ただれ、食事」で検索したところこちらのページにたどりつきました。

昔からお腹が弱かったのですが、年末年始から腸の調子が悪くなり、
最初は動物性タンパク質だけでしたが最近は何を食べても激しい下痢で体重減少が著しく、何も食べられないので血圧が30代になってしまい先週まで入院してました。

原因が不明で血液検査上問題がなかったので一旦退院になりましたが、
また腸の調子が悪く、じんましんや狭窄便状態で微熱がだんだん上がってきたこともあり、今週大腸内視鏡検査をすることになりました。

勉強も遅れるのが怖いのでがんばらなければなりませんが、
何より先が見えないことと、アレルギーがあるので検査が怖くて仕方がなく不安で大人でありながら最近はよく泣いていました。

しかし、先生の楽しく(?)前向きな検査の表現のおかげで、
私も頑張ってみようと思い勇気が出ました。

長々書いてしまいごめんなさい。
ありがとうございました。

いつか笑い話に

コメントいただき,ありがとうございます。
試験でただでさえ不安なのに,体の不調まであるとなると,
本当に不安でおられることと思います。

僕自身も今となっては笑い話ですが,
当時は検査も怖かったですし,
この病気を一生かかえて,俺どうなるんだろう?と思ったりしていました。

試験も病気も不安になるのはしょうがありません。
一部のものすごく強い人たちを除けば,僕達はみんな弱い人間です。

自分は弱い人間だということを,自分のために受け入れてあげてください。

辛い試験も,病気も,生きていればいつかは笑い話にできる日がきます。
そのときまで,休みつつ,自分のペースでがんばってください。

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