もうひとつの被災
29年の獄中生活を経て訪れた雪冤の機会は,未曽有の震災によって延期となりました。
これも,“被災”のひとつのあらわれです。
桜井昌司さんと杉山卓男さんは,1967年(昭和42年)8月,茨城県利根町布川で起きた強盗殺人事件「布川事件」の犯人として,無期懲役刑を言い渡されました。
1996年11月,相次いで仮釈放されるまでの29年間,2人は囚われの身でした。
裁判で,獄中で,そして仮釈放後も,一貫して無実を訴え続けた2人の叫びは,一昨年,ようやく裁判所に届きました。
再審決定です。
2010年7月,水戸地方裁判所土浦支部で,再審公判が始まりました。
6回の公判を経て,2011年3月16日,2人に無罪が言い渡されるはずでした。
2011年3月11日,大地震と津波が東北地方を襲います。
被災した裁判所は,再審公判の判決言渡しを延期しました。
映画「ショージとタカオ」は,仮釈放されてから再審公判が始まるまでの14年間,桜井さんと杉山さんを追い続けたドキュメンタリーです。
20代からの貴重な30年弱を獄中で過ごした2人が,人生を取り戻すために奮闘する姿を描いています。
冤罪という重いテーマが真ん中にあるのに,時にユーモアたっぷりの毒舌を語り,赤裸々な本音を隠さない2人の明るさ,たくましさに,思わず笑いが起きることも。
158分という長さを感じさせません。
第84回キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門第1位の受賞作品です。
大阪弁護士会は,来る2011年(平成23年)3月26日(土)午後1時,大阪弁護士会館2階ホールで,特別無料試写会「映画『ショージとタカオ』で,冤罪と取り調べの可視化を考える」を開催します。
http://www.osakaben.or.jp/web/event/2011/110326.php
ゲストは,桜井昌司さんご本人です。
茨城県内の自宅で被災したにもかかわらず,駆けつけてくれます。
「えん罪体験は,不運ではあっても不幸ではなかった」。
自らのブログでそう語る桜井さんの生の言葉を,ぜひ聴きに来てください。
桜井さんと杉山さんが,“ふつうのおじさん”になろうと苦闘する姿を,ぜひご覧ください。
目を覆いたくなるほどの震災被害が連日伝えられています。
予定どおり上映会を開催するか,延期したほうがよいのか,私たち主催者側も悩みました。
しかし,このような時にこそ,頑張れる環境にある私たちが,しっかりと日常活動を行っていくことも大事じゃないかと,私は思っています。
被災地におられる皆さんは,既に十分過ぎるほど頑張っておられます。
皆さんが生活と心の再建に専念できるよう,大阪の地で私ができること,私がすべきことを考えていきたいと思っています。
今回の震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに,
被災地の皆さんが,少しでも早く,安心して暮らせる環境を取り戻されることを,心より願っております。
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