3月17日、「防御権侵害国家賠償請求事件判決についての会長声明」を発表しました。

 

                 【防御権侵害国家賠償請求事件判決についての会長声明】

 

 昨日、大阪地方裁判所第18民事部(佐藤哲治裁判長)は、被告人らの秘密接見交通権または被告人の防御権及び弁護人の弁護権の侵害を理由として提訴していた国家賠償請求訴訟[平成24年(ワ)第7427号。以下「本件」という。]について、原告らの請求を認容し、被告である国に対し、当時の被告人であった原告及び当時の弁護人であった宮下泰彦弁護士に、それぞれ55万円宛(合計110万円)を支払えとの判決(以下「本判決」という。)を言い渡された。

 本件は、強盗否認事件の審理中、期日間整理手続が終了し、共犯者とされる者の証人尋問直前に、公判立会検察官が、裁判所に対し、大阪拘置所内に当時勾留されていた被告人の居室、信書室、領置倉庫及び附属施設(以下「被告人居室等」という。)に対する捜索差押許可状の発付を求め、裁判所が令状を発付したことを受けて、検察事務官をして被告人居室等に対し捜索差押えを行わせ、その結果、審理中の事件に関する弁護人宛の手紙や、弁護人が差し入れた尋問事項メモなどを押収したという事件であった。原告らは、これらの検察官の捜索差押許可状請求行為、及び検察事務官による捜索差押え、その後の検察官による不還付・精査行為は、いずれも被告人らの秘密接見交通権を侵害するのみならず、被告人が刑事訴訟における主体として、検察官と対等な立場で訴訟活動を行う権利、即ち被告人の防御権及び弁護人の弁護権を、直接に侵害する違法な行為であると主張していた。また、裁判官の令状発付行為も、検察官による違法な令状請求に対し、被告人らの秘密接見交通権または被告人の防御権及び弁護人の弁護権の侵害につながる可能性を考慮することなく、安易に令状発付を認めてしまったものであり、同様に違法な行為であると主張していた。

 本判決では、原告らの上記の主張のうち、検察官の捜索差押許可状請求行為の違法性(ただし、信書室に対するものを除く。)を認め、したがって、それに引き続く検察事務官による捜索差押え、及びその後の検察官による不還付・精査行為のいずれについても、その違法性を認められた。誠に至当な判断である。ことに、本判決が、検察官らの行為について、原告らの秘密接見交通権の侵害を認めただけにとどまらず、刑事被告人として有する防御権の侵害にも言及したことは、高く評価できる。

 しかしながら、本判決が、裁判所の捜索差押許可令状の発付行為を違法と認定しなかったことは、遺憾ながら妥当な判断とはいいがたい。ことに、本件における裁判所の令状発付については、人権保障の最後の砦である裁判所が、求められるべき検証を十分に行わず、捜査機関の請求を安易に認めてしまったものであり、これによって原告らの秘密接見交通権・防御権が侵害されることは容易に理解できたはずである。

 いずれにしても、検察庁並びに裁判所におかれては、本判決を契機として、今後、被告人・弁護人の秘密接見交通権または被告人の防御権及び弁護人の弁護権の主体たる地位を一層尊重されるよう求めるものである。

 

                                          2015年(平成27年)3月17日

                                             大阪弁護士会

                                              会長 石 田 法 子

 

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