10月19日の読売新聞ほかによれば、大阪府警吹田署は、11歳の長男に物ごいさせたとして、33歳の父親を児童福祉法34条1項2号「児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為」違反として逮捕した。児童は「お父さんから『財布を落としたと言えば、知らない人でもお金をくれる』と言われてやった」と話しているという。ちなみに、罰則は「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれの併科」(60条)である。

ひどい親もいるものだが、法律論としてはどうだろう。児童がなんと言ってお金を貰ったか、明らかでないが、「財布を落としたのでお金を下さい」と言ったと仮定すると、これは「こじき」なのだろうか。

法令上、「こじき」の定義規定はないようだ。広辞苑によると、食物や金銭を恵んで貰って生活する者とある。「右や左の旦那様…」というのが典型例であり、子どもにこれをやらせれば明白な児童福祉法違反だが、本件はこれに当たるだろうか。また、「児童を利用してこじきをする行為」というのは、大人が自分でこじきをする際、哀れみを買うため児童を隣に座らせるような行為や、「お父さんが病気で仕事できないからお金を恵んで下さい」と児童に言わせる行為ではなかろうか。もしそうだとするなら、本件は児童福祉法違反にはならないことになる。

むしろ、「財布を落としたので」云々というのは、こじきというより、大人がやれば寸借詐欺だ。つまり本件は、子どもを利用した詐欺ではないだろうか。

14歳未満の子どもは、刑事未成年(刑法41条)とされ、罰せられない。しかし、刑事未成年者を道具として利用して犯罪を行った者は「間接正犯」として処罰される(学説上は異論もある)。本件は、刑事未成年者を道具として利用し、「財布を落とした」という虚偽の事実を告げさせて人を欺き金員を詐取したものとして、詐欺罪(刑法246条1項)に当たるとも考えられる。罰則は10年以下の懲役であり、児童福祉法違反34条1項2号違反より重い。

ちなみに、10月4日に長野県で、10歳代の娘に売春をさせた母親が逮捕され7日に佐賀県で、中学生の娘に売春をさせた母親が逮捕された。9月には、小学校6年生から娘に売春をさせていた母親が北海道警に逮捕された。児童福祉法上、「児童に淫行をさせる行為」(34条1項6号)にあたる場合は10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれの併科になる(60条1項)。なお、他罪との競合の問題もあるが、ここでは触れない。

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