2013年10月28日 (月)

裁判所構内での接見

1.裁判所で被告人(被疑者)と接見をしたいとき
公判の前に少し話をしておきたい、というときに裁判所で被告人と接見をする場合があると思います。(勾留質問の際に裁判所に居れば被疑者段階でも接見をすることはあるかと思います)

その際、大体の場合においては、直接接見室に行くのではなく、
まずは書記官室に赴いて、
「●●さんと接見がしたいのですが。」
…と書記官さんないし事務官さんに声をかけることになります。

そうすると、「接見申出書」「指定書」「報告書」という紙が1枚になった用紙を出されます。その「接見申出書」の部分に被告人名、罪名、弁護人名等を記入して職印を押すと、被告人が裁判所に来ていることを確認のうえ、事務官さんが接見室まで案内をしてくれます。

“大体の場合”と書いたのは、どうやら裁判所によって運用が異なるようだからです。
具体的には、大阪地裁の本庁においては、被告人が警察署ではなく拘置所に移送されている場合には直接地下の接見室に行けばいいようですが、堺支部になると、被告人が警察署に居るか拘置所にいるかにかかわらず接見申出書は書いてもらう、という運用だそうです(事務官さん談)。

2.刑事訴訟法規則30条
これに関して刑事訴訟法規則30条は以下のように規定しています。

「裁判所は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が裁判所の構内にいる場合においてこれらの者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要があるときは、これらの者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見については、その日時、場所及び時間を指定し、又、書類若しくは物の授受については、これを禁止することができる。」

接見申出をして指定を受ける。
一応の根拠は上記条文にあるのだと思いますが、
①条文上「できる」としかなっていない以上、原則指定をされなければいけないというのは、検察官による接見指定がされないことが原則であることとの均衡が取れていないのではないか?
②(裁判所によるようではあるけれども)拘置所にいるか警察署にいるかで扱いが変わるのも特に理由はないのではないか?
…そんなことを思ったので、理屈がつくのかどうかを調べてみました。

3.指定が原則?
  「増補 令状基本問題(下)」193頁をみると、
  刑事訴訟法39条3項が検察官等の身体拘束について責任を持つ分野における接見交通権の制限を規定したのに対し、

「規則30条は、被告人(被疑者)が裁判所の構内にあって、裁判所(裁判官)の責任の分野におけるその制限を規定したものである」

のであって、分野が違うのだ!
…と書かれています。
つまり、規則30条の制限がかかるからと言って法39条3項の制限も同じようにかかるわけではないのだからいいじゃないか、ということのようです。
事実上、設備上の問題がなければ接見を制限されることはないので、結果として問題は生じていないのだと思いますが、なんだか釈然としないところです。

4.警察署にいるか拘置所にいるか、被疑者か被告人か
  被疑者ないし被告人が裁判所構内に居るとき、その収容場所は以下のようになります。
  
  ①拘置所に収容されている被告人→いわゆる仮監獄
  ②拘置所に収容されている被疑者→いわゆる仮監獄
  ③警察署に収容されている被告人→同行室
  ④警察署に収容されている被疑者→同行室

多くの裁判所で①については裁判所に対する接見申出は不要とされているそうです。
その理由として、「増補 令状基本問題(下)」194頁は

「一般的には、仮監は拘置所の分室としてその戒護設備、人員も整っていること、接見等はほとんど選任のされている弁護人であることなどから、特別の事情がない限り、接見等の指定の必要性に乏しい」

と書いています。

 他方、④については多くの裁判所において接見申出が必要な理由については、

 「④においては、同行室は警察から裁判所へのいわば押送の途中と言っていい状態であり、戒護設備、人員等も十分でないこと、接見等は弁護人となろうとする者の間でもされること、そして、何よりも勾留質問の円滑な実施という目的との間で調整を図る必要がある」

と書いています。

このような理由については一応筋が通っているのかな、と思います。
何気ない運用ひとつとってもそれなりに根拠や理屈があるものですね。
考えるって大事です。

先日国選を受け持った被告人は、③の場合に接見申出をしています。
被告人である以上裁判所に接見に来るのはまぁ弁護人がほとんどだろうし、①の理由に近づけて申出は不要なのではないかなぁとも思っているのですが、
実害も特に出ていない以上運用が変わる可能性は低いのでしょう。

 まだ刑事裁判をしたことのない裁判所は大阪府下でも沢山あるので、今後も留意していこうと思っています。

考えるということ

葉野先生、ありがとうございます。
考えるって大事だと思います、本当に。
受験生時代に頭がくーっとなりそうなほど考えたことはちゃんと覚えていますし(笑)。

小島先生 実務の上では本当に必要なピンポイントの部分だけを

小島先生

実務の上では本当に必要なピンポイントの部分だけを調べることが多いですが、周辺部分まで調べて理解するのが本当は一番いいのですよね。なかなか心の余裕は持てませんが、気を配っていこうと思うところです。

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