2010年3月25日 (木)

信頼関係

弁護士になって2年数か月。弁護士になる以前に抱いていたイメージと違い、実務に就いてから意外に感じたことはいくつかあります(単に自分の不勉強、不見識のゆえですが・・・)。

 

そのひとつが「(残念ながら)弁護士は意外と依頼者と揉めることが多い。」別の言い方をすれば「依頼者との信頼関係は受任時から当然に存在しているものではない。」ということです。

 

これまでに弁護士法や弁護士職務基本規程を通じた弁護士倫理に触れる機会はたくさんありましたが、毎回といっていいほど「依頼者との信頼関係」というキーワードが出てきました。

 

それを、僕は、「受任時に存在している信頼関係を損なうことがないよう維持できるよう努めるべき」とイメージしていましたが、実際にはそう簡単な話ではなく、受任時にプラスマイナスゼロ場合によっては不安感を抱かれながらマイナスの位置にある信頼関係を少しでも構築していけなければ、弁護士業務は依頼者との関係で「もたない」ことを痛感しています。

 

日弁連は、今月18日に、平成21年7月17日理事会議決にかかる「債務整理事件処理に関する指針」について、債務整理事件取扱の広告に弁護士費用の表示を「心がける」ことなどの改正を行ないましたが、その指針には「直接かつ個別の面談の原則」も示されています(原則ですので例外も規定されています。例外をみればさらに趣旨がよくわかります。この原則に対する例外があり得ることもまた当然だと思います。)。

 

債務整理事案に限らず、受任時の弁護士と依頼者の直接かつ個別の面談は、信頼関係を構築するために必要不可欠な作業といっていいのではないでしょうか。

 

直接かつ個別の面談によってこそ、丹念な聴き取りによる十分な事実(証拠)の確認、処理方針の説明、報酬の説明、最終的な委任意思の確認ができますし、両者が顔を突き合わせることによってはじめてわかるお互いの外見やキャラクターも信頼関係の構築に資するのでしょう。

 

インターネットによる法律相談等、場合によっては直接かつ個別の面談によらない便利な方法によって弁護士へのアクセスを容易にすることも重要な課題になっていますが、直接かつ個別の面談という原始的な方法の効用を忘れることはできません。

 

これまでの2年数か月、主な取り扱い業務の特殊性もあってか、直接かつ個別の面談によらずに電話のみで受任して、電話のやり取りのみで事件処理してしまったこともないではありませんが、やはりそのような事案では依頼者からの信頼を勝ち得ず処理方針に納得してもらえない、あるいは依頼者から不信感をもたれていることがひしひしと伝わってくるなかでの事件処理になってしまうようなことも少なくありませんでした(もちろん、単に、僕の力不足、経験不足によるところも大きいです・・・)。

 

信頼関係を構築できないなかで事件処理を続けることは、何よりも依頼者にとって迷惑なこと(闘わなければならない相手が内輪に1人増えます。)ですが、弁護士にとっても不幸以外の何物でもありません。

 

さりとて一度受任した事案を辞任することは決して容易ではありませんので、やはり最初の受任時、受任方法がいちばんのポイントになるのかもしれません。

 

弁護士が真に市民からの信頼を勝ち得る「グッドパートナー」であり続けるためにも、敢えてお互いが手間隙をかける(かけなければならない)ことの意味を考え続けたいと思っています。

私は直接面談で受任して何度か来訪してもらい繰り返し説明して

私は直接面談で受任して何度か来訪してもらい繰り返し説明しても理解を得られずに連絡が取れなくなったケースがありますし、逆に、地方の人に電話と郵便で受けてくれないことに苦情を言われたこともあります。指針を順守しているためにサラ金の高金利に苦しみ続けている地方の人には申し訳ないと思いますが、日弁連は懲戒権もあるので、私としては委縮せざるを得ません。

この問題は得てして弁護士どうしの対立で物事が歪められがちな日弁連ではなく、国民を代表する国会で決めるべきことだと思います。

貴重なご経験からのご教示ありがとうございます。

どういう受任方法をとるべきか(とらなければならないか)という問題は、事件の類型や当事者の環境やキャラクターなどとも複雑に絡み合う難しい問題だと感じています。 直接・個別の面談が原則というルールは普遍的でしょうが、おっしゃるとおり懲戒までつきまとう明確なルール作りはまた難しいところだと思います。 ただ、ご指摘のとおりに各弁護士会や日弁連がまったくの機能不全に陥っているのであれば立法による解決もあり得ましょうが、弁護士業務の根幹に関わることなのですから、まずは何と言っても弁護士自身で答えを出すべきです。 それぞれの事件の類型にも応じて、弁護士へのアクセス障害もなく、かつ、信頼関係を築き得る受任方法が何かを探ることは、まずは各弁護士会ないし日弁連が最前線の現場に立つ個々の弁護士の経験をもとにその意見を汲み上げて集積するところから始めるべきこと、弁護士自身で考えて弁護士自身で一定の答えを出すべきことだと考えています。

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