Q 就職浪人中の知人の子どもが奨学金を返せなくなり、厳しい取り立てを受けて困っています。どのようにして解決したらよいのでしょうか。

 

 

A 最近、「奨学金が返せない」という相談が目立ってきています。これは、大学を卒業した若者が就職できない、あるいは就職できたとしても非正規雇用などのため収入が低く、自力で奨学金を返済できなくなっていることが主な原因となっています。

また、奨学金の保証人となっている親らも自身の収入の低下や高齢化などによる生活苦のため、支払いが困難になっていることも挙げられます。

 

この問題の背景としては、高卒では就職で不利になるため大学へ進学せざるを得ない現状や、国立大ですら授業料が年間50万円以上になるという学費の高額化、利息付きの貸付が大半を占めるという奨学金の教育ローン的性格があります。

更に、奨学金の貸付を実施している日本学生支援機構(旧日本育英会)が近年、かつてより厳しい取り立てを行っていることが挙げられます。

 

日本学生支援機構は、滞納者の情報を信用情報機関に登録するいわゆるブラックリスト化を進め、債権回収会社(サービサー)に取り立てを委託し、訴訟などの法的措置もとっています。

 

返済の猶予制度がないわけではありません。日本学生支援機構の奨学金については、返還期限の猶予や減額返還を求めることができます。

しかし、これらの制度は運用上、延滞が発生していないか、延滞を解消しなければ利用できないとされています。

 

本件では、厳しい取り立てを受けているとのことですので、既に延滞が発生しているものと思われます。そうなると、利息以外に未払額に対して年1割の延滞金が発生しますので、これから少しずつ分割して返済を続けても完済が困難な状態となっていることが考えられます。奨学金も借金(債務)ですので、自己破産・個人民事再生などの法的な債務整理が必要となることも想定されます。その場合、保証人を含めた対応を検討しなければいけませんので、弁護士にご相談いただければと思います。

 

本件のようなことは、現在、誰にでも起こり得ることとなっています。早めの相談で、より早く、よりよい解決が実現されます。速やかに弁護士会の窓口などで法律椙談を受けてください。
 

〈回答・山田治彦弁護士(大阪弁護士会所属)〉

                    2013年5月11日 毎日新聞大阪版朝刊掲載

 

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