販売会社に責任認めた裁判例も

 

 

Q.3年前、ベイエリアの高層マンションを購入しました。

「良好な眺望が楽しめる」とのうたい文句にひかれたのですが、最近目の前にもっと高いタワーマンションが建設され、景色がほとんど遮られてしまいました。

購入時、不動産会社の担当者は「近くにマンションは建ちません」というようなことを言っていたのに、腹が立ちます。この会社から賠償金をもらうことはできますか。

 

 

A.ある土地や建物の所有者らが、その場所から良い眺望を享受できる利益を「眺望利益」と言います。

これが侵害されたことを理由に損害賠償を請求するには、まずその眺望利益が法的保護に値するかどうかが問題となります。

 

具体的には

①文化的・社会的にみて客観的価値が認められる

②その人とその場所との関わり合いがある

③その人の生活に眺望が重要な価値を有している――ことが必要だと考えられています。

 

そして、眺望利益が保護に値すると認められれば、二つの方法で賠償請求できる可能性が生じます。

 

一つは、契約上の義務違反を理由に不動産会社の債務不履行責任を追及する方法、もう一つは眺望利益の侵害そのものを理由に不法行為責任を追及するものです。

不法行為責任を問う場合、ポイントになるのは、眺望利益の侵害の程度が一般的に受忍しえる程度を超えているかどうかです。

この点、眺望利益は日照権や大気汚染ほど生活に欠かせないものではないとの理由で、厳しく判断される可能性があります。

 

それでは、債務不履行責任を追及する場合はどうでしょうか。

あなたの場合のように、ベイエリアの眺望をセールスポイントにされ、また、「近くにマンションは建ちません」と担当者が言っていたような場合、買い主には眺望を阻害する建物が建設されることはないという信頼が生まれます。

不動産会社にはマンションを売った後も、この買い主の信頼を守り、眺望を妨げないように配慮すべき義務があると考えられます。

 

実際の裁判でも、マンションを売った後に、以前から所有していた隣接地上に眺望を害する建物を建設した不動産会社に対し、買い主への配慮義務違反を理由に損害賠償を命じた事例があります。

 

          <回答・郷原さや香弁護士(大阪弁護士会所属)>

2013年8月10日 毎日新聞大阪版朝刊掲載

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