地位が人をつくる
映画「エクスペリメント」を観ました。
40年前,アメリカの大学で実際に行われた心理学実験から着想したという触れ込み。
ドイツ映画「es」のハリウッドリメイク版だそうです。
エイドリアン・ブロディとフォレスト・ウィテカー,アカデミー俳優を2人も起用してます。
まあ,おひとりは,どうかすると,ツルベ師匠と錯覚してしまうんですが。
高額の報酬を約束して集めた被験者を看守役と囚人役に分け,雑居房と監視室を備えた模擬の監獄に,2週間閉じ込める。
看守役は制服と警棒を身につけ,囚人役は,名前ではなく番号で呼ばれるなど,本物さながら。
穏やかな常識人だった被験者は,与えられた役割に応じて,次第に人格が変わってゆく。
監獄内の秩序を守る大義名分のため,高圧的な支配者となる看守役。
看守役と反比例して,徐々に気力を失い,卑屈になってゆく囚人役。
あんまり書いてネタバレもよろしくないので,ここらでやめます。
しかし,R15+指定のハードな中盤から,いきなりあさっての方向にぶっ飛んだ感のあるいかハリ(いかにもハリウッド)なエンディングには脱力しました。
小雪のちらつくクリスマスイブのレイトショー,一人で観ただけになおさら…
それはともかく。
「地位が人をつくる」という言葉は,よい意味ばかりではないんですね。
たとえば,密室の取調室。
“正義”を語る取調官と,犯罪者のレッテルを貼られて追及される被疑者との間に,対等な関係はあるのでしょうか。
日本弁護士連合会は,被疑者取調べの全面可視化を求めています。
「私がやりました…」
その言葉は,被疑者の心からの反省に基づいた告白なのか。
取調官と被疑者という地位の差,支配と被支配の関係に屈服した末の,苦し紛れの発言なのか。
密室で行われる取調べをすべて録音・録画すれば,“自白”に至る過程を,後に検証することができます。
そこに,数々の冤罪を生んできた「嘘の自白」を防ぐ鍵があるはずです。
ところで,実際の実験は,パニックになる人が続出して中止されたようです。
映画では…これは書いたらダメですね。
ただし,模擬監獄の様子を24時間監視していたカメラが,重要な役割を果たしていたことは,書いておきます。
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