『手紙』 東野圭吾著
担当していた被告人と,たわいない雑談のはてに
自分が読み終わった手持ちの本を差し入れることになった。
お礼に,その被告人が私にプレゼントしてくれた本。
(以下は,多少ネタバレありです。)
***
『手紙』のストーリーは,
強盗殺人の罪で懲役15年の刑を下された兄をもつ弟が,
実生活で衝突する「リアル」を中心に展開される。
そして,刑務所で受刑している兄から届く弟への手紙が
アクセントになって進む。
弟は,いつも「もう少し」のところまできて,
そこで犯罪者の家族であることを理由に足をすくわれる。
弟は,その時,いくら良くしてくれていると
思っていた友人,知人であっても
やはり加害者家族であることで,
「すっと壁を作られる」ことを感じる。
当初は,強盗殺人犯の家族なのだから,
そういう対応をされて当然だと感じている。
兄と一緒に罪を償わなければならないと思っている。
しかし,これが続くとそうばかりも言っていられない。
自分の生活や家族を守るために,
犠牲にしなければならないことが出てくる。
本来,加害者の責任とその家族の責任とは
全く別物であるはずだ。
しかし世間は,それを文面通りには受け取らない。
兄からは
「刑務所での生活は変わり映えしない毎日です。」
という手紙が届く。
弟が直面している「リアル」と対比したら
あまりに能天気に映る。
***
弟の心情の機微な動きがすごくリアルで,
加害者家族の苦悩,被害者の苦悩,
加害者である兄の苦悩・・・涙がでるのもしばしばだった。
弟の勤務先社長が説く場面がある。
「加害者家族が感じる苦悩も,
加害者が償うべき罪の一部である。」
自分が背負っているものを償うこと,反省すること,
これをどういう形で実現できるのか。
とても難しい。いろいろ考えさせられた。
***
そして,私が読み解いているのは,
小説の中の弟の心情ばかりではない。
小説のストーリーは,
この本を贈ってくれた被告人の心情とシンクロしながら進む。
彼の人は,どんな気持ちでこの本を読んでいたのだろう。
彼の人は,どんな気持ちでこの本を選び,
私にプレゼントしてくれたのだろう。
本の感想を「手紙」に書いて送ると約束したのだが,
彼の人がどの刑務所にいるのか分からない。
この本にもあるように,
受刑者が出せる手紙の数は月〇回と限られている。
なので,元弁護人に受刑場所を
わざわざ手紙で知らせてくることは
ないだろうなーっと思いながら,
こうして感想をブログで報告することにした。
感想
私も少し前に読んで、解決できない問題への対処になんだかモヤモヤ・イライラした記憶があります(悪い意味ではないのですけど)。
自分の行為は、自分だけの問題ではなく周りの人に強く影響するんだということが、この本の中に描かれていますよね。
先生にこの本をプレゼントされたということは、この本を読んで気持ちを揺さぶられたということなのかなと思いました。
同感です。
モヤモヤ・イライラ感分かります・・・*もらった時にすぐに読んで,どんな感想を持ったか意見交換したかったなーと今なら思います。
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