2010年4月11日 (日)

弁護士の仕事は金儲け?

 一般的に、「弁護士の仕事」といえば、「裁判で依頼者の代理人になること」、「刑事裁判にかけられている被告人の弁護をすること」というイメージが強いと思います。
 最近では、テレビコマーシャルなどの影響で「貸金業者から依頼者が払いすぎた利息を取り戻す(過払い金返還請求)こと」というイメージもあるかもしれません。
 そして、「弁護士はお金になる仕事しかしてくれない。」という、ちょっと残念なイメージもあるかもしれません。

 

 確かに、弁護士費用には医療費のような保険制度がなく、依頼者の方の全額自己負担になるので、「弁護士費用が高い=弁護士は金儲けしている」というイメージができてしまうのでしょう。
 もちろん、弁護士業はボランティアではなく「仕事」であり、私たち弁護士はそれで生計を立てているわけですから、相応の弁護士費用をいただくことにはなります。
 でも、(きれいごとを言うつもりはありませんが)実際には多くの弁護士が「お金儲けのため」ではなく、「困っている人の力になりたい。」という思いをもって仕事に励んでいると思います。
 お金儲けが目的であれば、昔はともかく、今のご時世、弁護士よりも、もっと安定して高い収入を得られる仕事がたくさんあります。司法試験合格を目指して必死の思いで受験勉強をする必要などありません。
 ですから、経済的には割の合わない仕事でも、弁護士としての「やりがい、使命感」を感じることのできる仕事であれば、弁護士は積極的に引き受けています。逆に「やりがい、使命感」を感じられなければ、生涯続けられるような職業ではないでしょう。それだけ精神的にも肉体的にも「しんどい」仕事だと思います。

 

 また、多くの弁護士は、本業以外に、弁護士会の「会務」(委員会活動)もこなしており、これは当然ながらお金とは無縁なボランティア活動です。
 基本的には、弁護士会内部の活動であり、弁護士の自治を守る意味や、弁護士個人の自己研鑽という意味が大きいのですが、この活動が機能することで、対外的にも市民の皆さんの役に立っていることも多いのです(例えば、消費者被害、高齢者・子ども・女性の権利、生活貧困問題といった課題に取り組んでいます。)。


 
 でも、こういう弁護士の地道な(地味な)活動についてはあまり知られていません。
 世間で「弁護士の仕事は金儲け」という認識が浸透してしまっているのであれば、その誤解を払拭するために、弁護士の地道な活動についても広報する必要があるのでしょう。

 

 もし、弁護士を目指して勉強されている方で、「弁護士になれば金儲けができる」なんて思っている方がいらしたら、考え直した方がいいかもしれませんよ。

会務はボランティア?

こんにちは。
弁護士の先生方は、依頼者でもなかなか連絡が取れないほど多忙でいらっしゃるようですね。
会務は市民無料相談の事でしょうか?
他にもありましたら、この機会にぜひ教えていただきたいです。

記事を書いた渋谷です。 コメントをありがとうございます。

記事を書いた渋谷です。
コメントをありがとうございます。

ご指摘のとおり、弁護士会館や役所で行っている法律相談を担当することも、会務といえるのですが、これはまさに本業に結びつく(事件受任につながる→弁護士費用をいただく)ものなので、「ボランティア」とはいいにくいと思います。

私が想定しているのは、弁護士会内部で、弁護士会の運営や、各分野の委員会活動のことです。
イメージとしては、地域の「自治会」活動みたいな感じでしょうか。
ちなみに、私は、弁護士会の男女共同参画を推進するための本部に所属しており、また、女性の権利に関わる問題(DVやセクハラ被害など)を扱うグループにも所属しています。

もちろん、弁護士が自分たちの組織のために活動し、それが自分の研鑽にもつながるわけですから、ボランティアであることは当たり前のことです。
ただ、大阪には3500人以上の弁護士がいるので、大阪弁護士会という組織を支えるための会務は、それなりに大変な事務量となります。

でも、誰かがそれを担わないと大阪弁護士会が機能しなくなり、各種の人権活動(消費者、生活貧困者、高齢者、子ども、女性、障害者など困っている方への支援活動)がおろそかになってしまいます。

弁護士にはそういう地道な活動もあるんですよ、お金儲けばっかり考えているわけではないんですよ、ということを知っていただきたく、生意気な記事を書いてしまいました。
ですから、読んでいただけた方がいらっしゃっただけで、すごく嬉しかったです。

会務の件、よく分かりました

早速のご回答ありがとうございました。
弁護士会をより良く機能させる為に努力されておられるのですね。

実は、何人もの先生方に依頼を断られ続けた人や、1~2ヶ月連絡が貰えない人を見ており、何故?と疑問に思っておりました。
先生により様々な思惑があるのでしょうが、多忙の理由が一つ分かって納得いたしました。

渋谷先生のようなお考えをお持ちの方にもっとお話を伺いたいと思いました。
ありがとうございました。

生活保護の人を救済しているのは法テラスではないでしょうか。

生活保護の人を救済しているのは法テラスではないでしょうか。
アメリカのある州では弁護士会は任意加入ですが、ボランティア的なことをしている公益事務所も多くあります。
日本の弁護士会はくだらない官僚組織に堕しているというのが偽らざる感想です。
一部に熱心な人たちはいますが、大部分の弁護士は強制加入団体なので嫌々やっているという意識が強いように見えます。会議ばかり長くて実質的な議論はあまりなされないし。

そろそろ弁護士会という枠組みも考え直す時期だと思いますよ。

ご意見ありがとうございます。

法テラスが救済機関として機能するのは、具体的な事件(法的紛争)として成立している場合ですよね。
世の中には、具体的な事件への発展途上の状態で悩まれ苦しまれている方もたくさんいらっしゃって、そのような方々への直接的な支援(例えば、無料電話相談や、人権救済申立に対する調査など)や間接的な支援(市民向けの講演・シンポジウムの開催、声明発表など)を行っているのは、やはり弁護士会という組織だと思います。
また、弁護士会での活動を通じて学んだことを基に、個々にボランティア的な活動に取り組まれている弁護士もたくさんいると思います。
私は弁護士会に所属する1会員にすぎませんし、まだまだ経験の少ない(一応)若手弁護士ですから、弁護士会の実態をまだきちんと認識できていないのかもしれません。これから先、ご指摘いただいたような残念な感想を持つに至るかもしれません。
実際、組織が大きくなるほど、ご指摘のような傾向に陥ることは少なからずありますよね。
ただ、私自身は、まだそこまで弁護士会に幻滅しておりませんので、もう少し、弁護士会という組織の中で研鑽を積んでいきたいと思っています。

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