精神保健福祉法改正法案の見直しを求める会長声明

精神保健福祉法改正法案の見直しを求める会長声明

 当会は、本年2月28日に閣議決定され、通常国会で審議されている「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、「改正法案」という。)について、次のとおり、見直しを求める。

1 当会は、昨年7月に神奈川県相模原市の障害者支援施設で起きた障害者殺傷事件(以下、「本件事件」という。)の再発防止策として、政府が措置入院制度の運用上・制度上の強化のみを拙速に進めることについて、反対の意見を表明してきた(2016年(平成28年)11月11日付会長声明)。
 ところが、厚生労働省による改正法案の「概要」における改正の趣旨によれば、「二度と同様の事件が発生しないよう」法整備を行うとされている。これは、未だ本件事件の要因・背景が明らかでない中で、精神医療を犯罪予防のために用いようとするものであり、精神保健福祉法の目的(1条)に反するものである。
2 この趣旨を反映して、改正法案には、患者の治療や健康維持推進ではなく治安維持につながるおそれがある規定が含まれている。
 すなわち、入院措置を採った都道府県・政令指定都市に対して、すべての措置入院者を対象とする「退院後支援計画」(以下、「支援計画」という。)の作成を義務づけ、「精神障害者支援地域協議会」で協議・共有されるとともに、本人が計画期間中に転居した場合には転居先自治体にも通知されるものとされている。
 本来このような「支援計画」は、入院形態を問わず全ての入院患者に対して検討されるべきであるのに、措置入院対象者に限定されており、しかも「支援計画」の策定にあたっては、本人は一切関与せず、本人の意思やニーズを反映させる旨の規定すらない。
 そうすると、上記の改正の趣旨に照らせば、本人不在のままで策定される「支援計画」は、「支援」という名の下で退院後の監視につながる虞が大きい。
3 「支援計画」を定めるのであれば、入院形態を問わず、本人の意思やニーズが尊重されるよう、本人参加と同意に基づくものとなるよう手続が明確にされるとともに、独立した権利擁護者の選任等、精神障害者の権利擁護を推進(平成25年改正時の衆議院附帯決議)する実効性ある制度が不可欠であるところ、改正法案にはこれらが全く規定されていない。

 以上のことから、当会は、改正法案の改正の趣旨を本件事件の再発防止策と位置づけることを改めるとともに、「支援計画」のあり方を患者本人主体のものに抜本的に改め、入院形態を問わず、退院後の患者本人の地域生活を支援するための地域医療・福祉の充実と権利擁護制度の創設に向け、改正法案を見直すことを求めるものである。

2017年(平成29年)3月29日
  大阪弁護士会      
  会長 山 口 健 一

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