共謀罪に関する会長声明・意見書等

私たちは共謀罪法案について十分な審議を求めます

いわゆる共謀罪法案は、テロ対策を前面に押し出し、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「条約」)を批准するためにも必要だとされていますが、そもそも条約はテロ対策に関わる条約ではありません。また、「現行法上的確に対処できないテロ事案」に備えるものとされていますが、政府が掲げた三つの事案の内二つは現行法で対応が可能で、残りの一つも未遂罪を新設すれば、単独犯でも対応できます。

このように、共謀罪法案については、その立法の具体的必要性についてすら様々な見解が存する一方で、共謀罪法案によって、誰の、どのような行為が処罰の対象となるのか、国会の審議経過をみてもおよそ明らかとはなっていません。刑罰法規である以上、処罰範囲が明確となっていないことは、重大な欠陥であるといわざるを得ません。

また、共謀罪法案は、共謀段階での処罰を認めるものであることから、市民生活の監視等探知型捜査を必然的に前提とするものであり、市民の私的領域における自由を大きく制約するものです。

これらの点を踏まえると、共謀罪法案について、単に国会において審議に一定時間が費やされたなどということではなく、様々な論点について十分に時間を掛けて審議する必要があると考えます。
実際、この共謀罪法案については、最新の調査によれば、法案の内容をよく知らないという国民が半数近くいる一方で、今の国会で成立させる必要がないとする国民が6割以上もいるのです。

そこで、私たちは、法案の成立ありきではなく、十分に審議を重ねることを強く求めるものです。

平成29年5月21日

大阪弁護士会 共謀罪法案について十分な審議を求める会長経験者の会
阪口春男、鬼追明夫、竹林節治、中務嗣治郎、久保井一匡、児玉憲夫、髙階貞男、山田庸男、上野勝、畑守人、金子武嗣、中本和洋、藪野恒明、福原哲晃、石田法子、松葉知幸、山口健一
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