弁護士会から
広報誌
オピニオンスライス
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公益社団法人
2025年日本国際博覧会協会
担当局長(中小企業・地域連携)堺井啓公さん
SAKAI, Yoshimasa
来年の4月13日開幕の大阪・関西万博は、開幕まであと1年と少しとなり、チケット販売もすでに開始されました。パビリオンまとめサイトも開設され、「くるぞ万博」という感じになってきました。
大阪にとっては久しぶりのビッグイベントなので、今回は万博協会のキーパーソンである堺井啓公さんにインタビューしました。
■プロフィール
1966年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、1990年4月に通商産業省(現経済産業省)入省。2013年7月に経済産業省商務流通保安グループ博覧会推進室長兼博覧会国際事務局日本政府代表兼ミラノ博日本政府副代表として、食文化をはじめとした日本のすばらしさをPRすべく、事前の企画立案から本番までの諸調整などをリードした。その後内閣府地方創生推進事務局総括参事官、(独)中小企業基盤整備機構理事などを経て、2020年7月に公益社団法人2025年日本国際博覧会協会に出向。広報戦略局長、企画局長、機運醸成局長を歴任し、2023年4月より現職。
2025年万博がめざすもの
機運醸成局(2023年10月より広報・プロモーション局へ名称変更)という部署があることを初めて知りましたが、どういうことをやっておられるのですか。
機運醸成局は2022年の4月にできました。開幕までもう2年を切り、秋には前売りチケット発売開始ですが、いかに万博が魅力的でわくわくするもので、早く始まってくれたらいいなという意識を多くの方に持ってもらえるような活動をするところです。
2005年の愛知万博は、外国が自分でパビリオンを建設しておらず、こちらで建設した箱に入ってもらう形でしたが、今回は70年の万博に近く、多くのデザインに凝った外国のパビリオンや民間パビリオンが立ち並ぶあのような万博が来るんだという、そんな雰囲気にいかにさせていくか、万博に向けての認知度を上げて、早く見たいというわくわく感を起こしていくというのが目的です。そのためにロゴマークや「ミャクミャク」というキャラクターをつくり、多くの方に認知してもらう手段を考え、街にポスターを貼ったり、あるいはデジタルサイネージでどんどん情報も出していきます。
あとは、万博は大阪・関西だけのものではなくて、国家イベントですから、北海道から沖縄まで万博の利益を享受してもらいたいと思っています。特に海外からの来訪者には、この機会に日本を知って、見て、楽しんでもらいたく、全国を訪問してもらいたいと思っています。全国的に受け入れ体制を整えていただくとともに、全国的にも万博に向けて盛り上げていく役割も担っています。
大阪での万博は1970年以来55年ぶりの開催です。公式ホームページには「万博では新しい技術や商品が生まれ、生活が便利になる「きっかけ」となります」とありますが、具体的にはどのようなものが考えられますか。
2025年には「空飛ぶクルマ」が法整備もされて出てくるだろうと思います。あと、言葉の壁をなくすための自動翻訳システム。また、脱炭素のカーボンニュートラル、地球がこんなに暑くなっているので、CO2を排出しないとか温室効果ガスを出さないという技術も出てきます。そういうものがどんどん普及し、みんなが使うことによってCO2排出による温暖化が防げるというものを準備しています。
乞うご期待という感じですが、まだまだいろいろ面白いものが出そうですね。
空飛ぶクルマがJR大阪駅から万博会場まで飛ぶとか、そんなこともあるんですか。
交通手段の代わりに使うことはまだ無理ですが、今後交通アクセスの一つの手段になると思われていますので、今回はそういうものの先駆けを見せるということで、万博会場内外を結ぶ2地点移動から始めようとしています。
次に、「2025年万博がめざすもの」として、SDGs達成への貢献、日本の国家戦略Society5.0の実現とありますが、具体的にはどのようなものでしょうか。
「未来社会ショーケース事業」として、「スマートモビリティ万博」「デジタル万博」「バーチャル万博」「アート万博」「グリーン万博」「フューチャーライフ万博」というのがあります。先ほどの万博の目玉的な話もそうですが、SDGsに関係するものやSociety5.0(Society5.0というのは、超スマートな社会をつくっていく取り組み)などを会場内に実装しようと考えています。
「スマートモビリティ万博」では、会場アクセスや、会場の内外でEVバスなどを使うのですが、自動運転を導入したり、パーソナルモビリティやロボットも入ってきます。
「デジタル万博」では、パーソナルエージェントという形で、スマホがあれば、どこに何があって、そこに行くにはどうしたらいいか、どれぐらいかかるか、混雑具合を含めて、すぐ調べられるというものです。また、自動翻訳の機能により言葉の壁をなくすことにチャレンジしていきます。
「バーチャル万博」では、会場の外からでもPCを通じて、バーチャルでデジタルツインで会場内を見えるようにします。会場内でもスマホを活用したXRの演出をしていきます。
「グリーン万博」では、先ほどのSDGsに関係するような水素サプライチェーンのモデルを見せたり、CO2の回収を見せたり、資源循環ということがここでなされます。
「フューチャーライフ万博」では、巨大なパビリオンの中で、未来の都市をこのように考えているということを参画する企業が見せていきまして、交通モビリティー、環境、エネルギー、ものづくり、まちづくり、食と農などをするというものです。
あと、会場のいろんなところに、例えばキャッシュレスでものを買う進んだ仕組みやデジタル通貨、あるいはデジタルポイントといったものを実装していきます。
すごく未来的でわくわくするお話ですが、スマートやデジタル、バーチャルというのは、70代、80代の方がついていけるでしょうか。
全員が使えるようにはならずとも、デジタル化が、各世代に役に立っていると思っていただけると思います。
若い人なら、そんなことをやるなら行ってみようかなと興味が出ますが、70代、80代の方だと、あまり興味がなさそうに思ったのですが。
興味のありそうなものが中に含まれていればそれでええやんと割り切っていただけるといいなと思います。子どもたちには、未来を考えるとか、自分はこういう大人になりたいというきっかけを与えるような場でもあると思ってますし、またそれぞれの世代に響くものが何かあったらいいかと思います。お年寄りでもスマホを使うのがうまい人もいるので、それぞれの人にテーマである「いのち輝く」というものを感じてもらう、あるいは、未来社会はこうだというのを体験していただければ、どこかで感動は得られるんじゃないかと思います。
全てのことについて全ての人がというよりも、これがあるから行ってみようかなと思うような目玉がある、そういうイメージでしょうか。
申し上げてきたのは博覧会協会が企画する万博のコンセプト「未来社会の実験場」を実現する未来社会ショーケース事業のお話でして、万博では160か国の公式参加国がパビリオンを出すのが大きい魅力であります。それぞれの国は、3つのサブテーマから1つ選ぶ、あるいは、SDGsの掲げる17の目標のうちから1つ以上選ぶというお題に基づいてそれぞれの国が考えた素晴らしいものを出してくるのが期待されます。そこには、多くの見どころがあるでしょう。万博には、そういう海外パビリオンも出てくるし、民間パビリオンや自治体パビリオン、テーマ事業プロデューサーパビリオン(シグネチャーパビリオン)も出されます。そして、開催期間は184日間ですが、毎日いろいろな催事が行われ、ある日と同じメニューの日は二度とないところです。これが日本で、大阪で見れるというこんな機会はなかなかないと思います。世界の多くの国が5年に1度開催される万博に参加して、自分の国はそのテーマについてこう考えているんだというのを見せていく。それぞれの国のナショナルデーがあり、その日はその国の文化等を出して、会場全体をその国の色に染めることができる。だから、万博は毎日行きたいぐらい多くの見どころがあると思います。
今回の万博と前回の70年の大阪万博のつながりが意識されるようなことはあるでしょうか。70年の万博を経験されている方なら、70年の万博はこうだったとか、そういうつながりみたいなものがあったら面白いかなと思ったのですが。
前回の大阪万博は「人類の進歩と調和」というテーマでしたが、人間という命を持ったものが技術や社会をどうつくり上げていくかということにチャレンジして、どんどん伸びていた時代でした。岡本太郎さんが設計した太陽の塔の内側には、生命のDNAの遺伝子の展開がなされています。そこで今回、70年の万博を意識したものが、例えばこのミャクミャクです。赤い部分はいのちを持つ生物の最小単位の細胞を意識したものでして、それがこういうキャラクターやロゴになっています。今回の万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」ですので、「いのち」のつながりを意識できるとは思います。 また、当時は高度成長期であり、人類の技術で便利な経済社会をつくっていくとき大気汚染や水質汚染といった公害が出てきました。それらは克服してきましたが、現在においてもまだ目に見えないものは気にかけないというのが残っています。
その一例が石油の燃焼時等に生じるCO2の排出など目に見えないがそれが地球に温室効果を生じさせているのではないかというものです。
70年の当時は石油は枯渇するかもしれない資源であって大事に使おうという発想だったものが、今では石油をなるべく使わないようにしていこうという考え方になりました。石油に代わる動力エネルギーは何があるか、石油から作るプラスチックに代わるものができないか、燃やすとCO2を出してしまうものはリサイクルして使おうというものです。
持続可能な地球を作りましょうという動き、国連がいうSDGsがありますが、70年のときには見えないのでなんともないと思われてきたものが今ではそれがよくない原因であり、人類が考え方と行動とを変えていかねばならないとなってきたのです。
また、微生物の働きも目に見えない活動ですが、人間の健康や食糧生産にもかかわる重要なポイントになると思っています。
今回は、SDGsの目標達成年である2030年の5年前に世界が集まって、このテーマでやる万博ですから、ここで2030年に向けてこういうふうにするということを出していくので、むしろ70年でやったことの一部を否定することになるかと思われます。そういう意味で、70年を継承するのではなく、それを意識して一部を否定して新たな世界をつくり出すという万博になるのではないかと思います。社会の進歩を元に戻せと言うものではなく、さらに進歩させていくために、やり方を変えようというものです。日本が1国だけでやっていてもだめなので、万博を機に世界の国が160か国(数は取材時)集まりますので、そこに各国がSDGs達成に向けての処方箋を持ち寄って、日本からもたくさん提案して、それを世界で一緒になって実行していく、万博がそういう機会になればいいなと思います。
次の段階に入るようなイメージですか。
そうですね。万博を機に、世界でSDGsのための処方箋が出てきたら、それをまさに実行・実践の段階に入っていくとなると嬉しいですね。それを日本で開催するので、日本の方は万博を見に来て、こういうことができるんだということを意識して実施する。世界の方も日本に来てこれを意識して、持ち帰って世界でも実施する、そういうものができるといいなと思います。
前回から50年ですが、それでも皆さんの記憶に残っていて、万博記念公園も含めて愛されていると思います。そういう万博になったらいいなと思います。
そうですね。学びに来る、感動する、それぞれの方の人生の考え方が変わるきっかけになる、それを目指しています。子どもたちに見てもらいたいです。
パビリオンについて
次に、「いのちを知る」「いのちを育む」「いのちを守る」「いのちをつむぐ」「いのちを拡げる」「いのちを高める」「いのちを磨く」「いのちを響き合わせる」の8つのテーマがありますが、具体的に教えていただけますか。
テーマ事業プロデューサーが8人いて、それぞれの方に、今回このテーマに基づくパビリオンをつくっていただきたいとお願いしています。つくるだけではなく、そこでの演出、イベントなどもしていただきながら、このテーマを実践してもらおうと考えています。それぞれのプロデューサーは、例えば「いのちのあかし」「EARTH MART」など、「いのち」の何とかをより具現化して、その方の世界に落とし込みながら表現をされますので、パビリオンの形状からイベントまで目新しいわくわくするものが出てくると思います。8つの特徴あるパビリオンが誕生し、それが大屋根リングの中のシグネチャーパビリオンのエリアに配置されまして、これが万博の目玉になります。
会場マップを見ると目立つのが大屋根リングですね。
はい。リングは高さ12メートル(一番高いところで20メートル)あって、幅が30メートルで、周囲は2キロの世界最大級の木造建築になる予定です。これは構造的に、上には歩けるところが用意されて、その下は木を使った構造体で、夏の暑いときの日陰と動線になる予定です。
特に海上に出ている部分が面白いですね。
海に出ているところですね。これも上を歩けますが、この内側では夜になると水上ショーなどの演出がなされる予定です。
リングは1周2キロということは、歩いて30分ぐらいですか。万博会場では交通機関が走ったりもするのですか。
EVバスが走行する予定です。万博会場の外周道路をほぼ一回りします。あと、会場内にパーソナルモビリティを走らせるかもしれません。それから、会場アクセスに水素燃料電池船が走りますので、それに乗る楽しみや、北西にある発着場からは空飛ぶクルマに乗る楽しみもあると思います。
最近、海外のパビリオンがなかなか着工できないという報道がなされていて非常に心配しているところですが、大丈夫ですか。
はい。関係者でしっかりサポートしていきます。海外パビリオンも自分でつくるタイプのものは貸した土地に外国が自分で予算を確保してパビリオンを建てるのです。まず外国政府が外国で全体を見るゼネコンさんなどと契約をし、そして、外国のゼネコンは日本でどこのゼネコンを使うかは自分で決めて進めていく流れになります。博覧会協会は日本の法律で建ててもらうために、例えば建設の許可申請が円滑にいくよう各種相談を受けて外国へのサポートを一生懸命やっています。
受けてくれる日本のゼネコンがなかなか見つからないというのがありますが、それは価格、デザイン、工期等をうまく擦り合わせることができれば片が付くと思っています。一方で、協会が用意する建物、先ほどの8つあるシグネチャーパビリオン、大催事場や迎賓館などのいろいろな建物やリングなどは全部入札が終わり、もう建設が進んでいます。あと、海外のパビリオンや民間のパビリオンは、協会がやるのではなくてそれぞれのところが主体的にやります。建設業界も今あちこちでかなり仕事が多くなって、物価も上がって人の確保もしにくい状況です。とはいえ、外国のパビリオンを建てるのには日本のゼネコンが動いてくれないといけないので、何とかうまく擦りあってもらいたいというのが希望です。
そのために、各ゼネコンさんが自分たちでそれぞれの国にアプローチするのも大変なので、博覧会協会のほうで各国がそれぞれどんな建築物をどんなタイミングで費用はいくらかけてやろうとしているかを把握してゼネコンさんに提供しています。何度もゼネコンさんに集まってもらう会を開いて、そのたびにアップデートされた情報を提供しています。
あと、建設の時間外労働の2024年問題もあり、資材の高騰や人が集まりにくいという中で、ワンストップショップといい一つの窓口で全ての建設に限らず相談に対応する体制をとっています。さらに、各国ごとに担当者を付けて細かいケアもできるようにしています。実際に、パビリオン建築の仕方は国によって一様ではなく、ある国は、大きな固まりをつくった上で会場に持ってきて組み合わせて建築するところもあり、その場合、会場外でやっている部分が多く、会場でやる分の工期は短くて済むところもあったりします。国ごとの担当者がしっかりとコミュニケーションを取りながら、あとゼネコンさんには情報をしっかりと出しながらうまく解決していこうと思っています。
次に、万博では催事の企画を検討されていますか。
例えばアート万博というのがあります。万博会場で184日間ずっとイベントをするのですが、ウォータープラザの水上ショーや、「静けさの森」でのインスタレーション、これは夜に行う催事です。パレードやストリートパフォーマンスという昼の催事もあります。
催事の企画プロデューサーに小橋賢児さんを起用しました。彼は東京パラリンピックの閉会式でショーのディレクターを務めた方です。ワンワールド・ワンプラネットとして、もし1つの国だったらどうなるということを演出で表現するような催事をしたり、ヒューマンオーケストラとして、一人一人の個性輝く未来のオーケストラという形でイベントをやり、さらには、いのちをつなぐ万博祭りということで、祭りを集めて実施したり、これらは主催者がやろうとしている催事の一例でして、こういうのに賛同して協賛をいただく企業に来てほしいと思っています。
それ以外に省庁や自治体がやる催事や、一般の方が実施する催事があるのも万博の特徴です。そのために、催事の場所は1万人が入る屋外イベント広場や、4,000平米のメッセ会場や、2,000席ある大催事場があり、小規模なステージがあるなどして、それらを使って184日間の万博で一日たりとも同じイベントをやっている日はないというくらいにバラエティに富んだ催事が万博を彩ります。
1970年の万博では月の石という目玉がありましたが、今回目玉は何かありますか。
月の石はアメリカ館でした。主催者としては2005年の愛知万博では冷凍マンモスをやりました。目玉はいろいろ考えていますのでお楽しみにしていてください。70年の大阪万博では、後に太陽の塔がレガシーとして残りました。今回もレガシーとして残るものが出てくる可能性は大いにあります。
次に、アクセス等、障がい者の方も議論に参加して企画されるなど、多様な人の意見が反映されるようですが、具体的にはどのような取り組みがなされていますか。
大阪・関西万博に訪れる全ての人が安全で快適に会場まで移動できる「交通アクセスに関するユニバーサルデザインガイドライン」というものをつくります。そのガイドラインでは、国の基準や東京2020のアクセシビリティ・ガイドラインや施設整備に関するユニバーサルデザインガイドラインなどの考え方を踏襲して、来場者のアクセスで主に利用される鉄道駅などの施設の新設や改良、あるいは車両などの調達・改良を行う際に参考となる指針として取りまとめています。その策定に当たっては、学識経験者、障がい当事者、関係事業者などのメンバーによる交通アクセスユニバーサルデザイン検討会で議論し、合意に達した内容を盛り込んでいます。本ガイドラインが万博のレガシーとなってアクセシブルなまちづくりへの発展につながることを目指しています。
具体的にユニバーサルデザインに関する好事例と考えているのが、音と文字で案内できる多言語アナウンスツールや、カームダウン、クールダウンのできるスペースを設置します。また、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が22年5月に施行されましたが、基本理念を盛り込んでウェブサイトを利用して必要な情報を得られるようにするためにアクセシビリティも確保していきます。
障がい者の方以外での多様性の反映として検討されていることはありますか。
持続可能な大阪・関西万博開催に向けた方針というのがありまして、人権や多様性などについて国際的な基準に沿った対応をしていくのですが、その中でテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を考える軸として、「Saving Lives」「Empowering Lives」「Connecting Lives」というサブテーマを設定するとともに、5つの大目標、「People」「Planet」「Prosperity」「Peace」「Partnership」を掲げて、持続可能性に向けた活動の方向性を示しています。
さらに、指針に基づいた行動計画というのがありまして、その中でジェンダー、人種、文化などの多様な人々に配慮した万博運営や、実際に会場に来ることのできない人への対応、あるいは、サプライチェーンを含めた人権、多様な働き方の実現などの課題解決に向けた博覧会協会の取り組みを取りまとめて公表しています。サプライチェーンにおける人権の配慮については、22年6月の持続可能性に配慮した調達コードというのを策定しまして、サプライヤーなどに対して、環境、人権、労働、経済に関する基準を示し、契約時に調達コードの遵守を求めています。また、博覧会協会では、年齢、性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず、スタッフ及びボランティアを公募していく予定です。
次に、万博の経済効果について教えてください。
想定来場者数は2,820万人です。その方々は、万博に来られる際に宿泊したり、飲食もされます。また、会場外での滞在やアクティビティーもされます。また、海外から来られる方は350万人を見込んでいまして、欧米の方で10日から2週間ぐらい、アジアの方だと5日から8日ぐらいの滞在で、万博会場内で過ごす以外には日本各地のすばらしいものを見てもらいたいと思っています。海外の方は万博があるから2025年は日本に行こうと思われて来られますが、万博に来られるのは1日か2日くらいだとすると、他の日は日本全国の素晴らしいところに行ってもらえたらいいなと思いますので、万博・観光ポータルサイトでは地域での体験型旅行商品を紹介し、販売する仕組みを整えています。
それがまさに万博による経済効果を発揮させることになると思います。日本国中に広がれば経済効果の享受は全国でなされるだろうと思っています。
半年間の万博の後はどのような利用が考えられるでしょうか。
万博は6か月の期間で、建物は仮設で建てます。その後、その建物をそこに置いておくわけではなくて、万博が終わった後は土地を所有している大阪港湾局に更地で返すのが原則です。といいながら、新しい駅を含めて一部の建物は仮設ではない形でつくっているところもありますのでいくつかの建物は残ります。たくさん立つパビリオンもそのパビリオンはなくしても資材をリユースする、あるいは、パビリオンを移設してどこかで有効活用したいという方と繋げることについて今一生懸命調整を進めています。開催場所を更地にした跡地の利用は、土地所有者である大阪府市が今考えているところです。どういう使い方ができるかという意見募集をしたり、これをやりたいとの企画提案を受けるなどをされています。用途はまだ決まっていないと思いますが、同じ夢洲の隣地がIRの予定地になりますので、IRがうまくいったらその場所を拡張して、IRの2期工事という形でやることもあるかもしれませんが、そこは大阪府市に具体的に聞いていただけたらと思います。
次に、公式キャラクターのミャクミャクが、選ばれる過程でのエピソードがあれば教えてください。
まず、ロゴマークが決まりました。発表時の座長コメントでは、既視感がなく、飛び跳ねるようで今にも動き出しそうである、というような表現をされていました。このロゴマークのシンボルマーク部分、ここは細胞が集まったものをイメージしていますが、水から生まれた体がその細胞の集まりをそのままかぶった形なのが今回のキャラクターになったところです。これに名前を公募して選ばれたのがミャクミャクになります。カタカナでミャクミャクと書いた人が2人いて、脈々と過去の素晴らしいものを未来につなぐという意味と、血液の動脈、静脈の意味と出ていました。
機運醸成のお仕事をされている中で、ご苦労などあれば教えてください。
万博は5年に1度の世界最大イベントで、そのテーマが「いのち」であり、「未来社会」、そして「SDGs」にも力を入れています。万博が始まって来場いただければすごいということがきっとわかってもらえると思いますが、行って見るまではよくわからないでしょうし、そこをどうやってムードをつくり上げていくかが大変かなと思い取り組んでいます。東京オリンピック・パラリンピックは、コロナ禍で1年延期した後、結局無観客になってしまったので、万博もコロナ禍の後で物価上昇や人の確保の困難さもあるなど、2025年4月開幕に間に合わないのではないかという声が出てきかねないですが、進捗状況を発表して、ここまで来ているという話をしながら、本当に万博をやるんだという機運をどんどん盛り上げていきたいと思っています。博覧会協会では、約800人の職員が2,820万人の来場者を受け入れるにあたり安全に楽しんでいただけるような準備を2018年11月の開催決定以降計画的にやってきていて順調に進めてきているところです。
また、機運を盛り上げるには、多くの方に万博を自分ごとになっていただくのが重要だと考えています。簡単に参加いただけるメニュー「TEAM EXPO 2025」プログラムがあり、今ある課題を解決してこういう未来社会を作るという取り組みについて、共創チャレンジとして登録をし、弁護士会さんは共創パートナーとして、そうした共創チャレンジを生み出したり、支えて大きく展開していく役割を担う、そんな立場になられると素晴らしいかと思います*1。
※1 大阪弁護士会は共創パートナーとして登録しており、弁護士業務改革委員会をはじめ複数の委員会等から共創チャレンジに登録がなされる予定です。なお、「共創チャレンジ」とは、大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現するため、自らが主体となって未来に向けて行動を起こしている、または行動を起こそうとしているチームの活動のことです。
未来社会は自ら参画してつくり上げていくものです。受け身であっても未来社会はやってきますが、自分たちで能動的に何かアクションを起こして課題を解決するのは非常に尊いもので、人間社会活動の中で必要だと思います。そういったものを万博を通じてやっていただけるチャンスですので、誰でも企画して登録していただければと思っています。もう既に1,500案件ぐらいの共創チャレンジが出てきていますし、共創パートナーも300を超える数が出ています。そういう形でぜひ参加いただきたいと思いますし、「TEAM EXPO 2025」では万博会場での出展も可能です。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
2023年(令和5年)8月4日(金)インタビュアー:岩井 泉
大久保康弘
秋山哲郎