打者の折れたバット顔に 傷残った女性、賠償は

Q. この前の週末、友人とプロ野球観戦に行きました。内野席で見ていたのですが、打者のバットが折れ、私のところに飛んできたんです。私はよけきれず、顔に大きな傷が残ってしまいました。球団に賠償を求めることはできますか。私は会社の受付で働く20代女性です。

■賠償請求を認めた例もあるが多くは自己責任

A. もし、一生残るような傷が顔にできてしまったとすれば、特に若い女性にとってはきわめて大きな損害です。何とかしてもらいたいところだとは思います。
 同じようなケースが裁判で争われた例として、阪神甲子園球場で観戦中、折れたバットが顔に当たって傷が残ったとして、観客が阪神側に損害賠償を求めた件があります。神戸地裁尼崎支部で判決があり、原告の請求は退けられました。裁判所は、球場のバックネットや内野フェンスの高さが一定の基準を満たしていることや、看板やアナウンスなどで飛来物への注意を促していたことから、球団側に責任はないと判断したのです。
 一方、ファウルボールが顔に当たった事故を巡る裁判もありますが、球場や球団の責任が認められた例はほとんどありません。ネットなどの安全設備を欠くような場合には、賠償が認められる余地があるとはいえ、プロ野球が開催されるレベルの球場の責任が認められることはめったにないでしょう。ただ、2010年に札幌ドームでファールボールが目を直撃して怪我をしたという事案では、札幌高裁は、札幌ドーム側の責任は否定したものの、北海道日本ハム球団については、この件ではより十分な安全対策をとるべきだったとして、賠償義務があるとしました。小学生連れの家族を招待するという球団の企画の中で起きた少し特殊なケースで、より安全な席を案内するといった配慮をする必要があったとされています。
 試合観戦中に不幸にして事故に遭っても、ほとんどのケースは自己責任になります。ファウルボールや折れたバットが飛んでくるなど、球場は時に危険な場合もあります。選手の一投一打の行方をしっかり見守り、十分に気をつけて観戦してください。もし不幸にして事故に遭った場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

 <回答・小仲 真介弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載日時点のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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