有名人が来店、フェイスブックに投稿

Q. 私は空港の雑貨店の店員なのですが、軽率なことをしてしまいました。先月、俳優のAが女性と一緒に来店し、Tシャツを買っていったのです。サングラスをしてお忍び旅行っぽい感じでしたが、私はすぐに気付きました。カード決済だったので、Aが署名したレシートをスマートフォンで撮影し、自分のフェイスブックに「今日、Aが女と店に来たよ」って投稿してしまったのです。すぐにAの所属事務所から店に抗議があり、騒ぎになっています。これからどうなるのでしょうか。

■カード決済のレシート撮影 慰謝料支払い義務

A.  自分の働いている店に有名人が訪れた時、つい写真を撮ったり、誰かに話したくなったりするものですよね。しかし、友人や知り合いに話す感覚そのままにフェイスブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に書き込むと、トラブルになることもあるので注意が必要です。こうしたSNSへの書き込みや写真の投稿は必ずしも違法になるとは限りませんが、店が管理すべき顧客情報の漏洩というべきものであれば個人情報保護法違反になりますし、個人情報保護法に違反しないとしても顧客のプライバシーや肖像権侵害の問題になる可能性もあります。
 今回のケースであれば、カード決済時のレシートは個人情報保護法上は個人データとして店が管理すべき顧客情報なので、これを撮影してSNSに投稿することは個人情報保護法違反となり、店は同法上の責任を問われうることになります。当然、店員であるあなたも店から何らかの処分などの責任を問われうることになります。
 また、個人情報保護法違反以外にも、俳優Aや女性のプライバシーや肖像権侵害の問題も考えなければなりません。もっとも、プライバシーや肖像権の侵害については直ちに法的な責任が生じるというわけではなく、それが法的に保護すべき程度のものか個別的に判断されます。一般に有名人は世間に顔が知られており、その行動も注目されやすく、うわさされてもある程度はやむを得ないという特殊事情がありますので、単に俳優Aが女性と一緒に来店したことをフェイスブックに書き込んだだけなら、あなたや店がプライバシーや肖像権を侵害したとして法的な慰謝料の支払義務を負うことは考えにくいでしょう。しかし、カード決済のレシート写真を投稿したことは重要なプライバシーを漏らしたと判断され、慰謝料の支払い義務を負う可能性は否定できません。
 今後については、あなたと店がAや女性に謝罪して慰謝料を支払うとともに、あなたは店から減給や休職などの何らかのペナルティーを受けることになっても仕方ないと思われます。SNSを利用する場合には、友人や知人以外にも見られるものであるという意識を忘れないようにしましょう。

<回答・結城圭一弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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