賃貸マンションが「事故物件」

Q. 私は転勤に伴い、最近大阪に引っ越してきました。不動産仲介会社に賃貸マンションを紹介され、間取りが気に入ったので借りました。ですが、実際に住んでみると、たまに何かの気配を感じて気味が悪いのです。しばらくして、知り合いになった同じマンションの住人に「あなたの部屋って、半年前に女の人が自殺したところじゃないの?」と教えられました。もし本当なら、すぐにでも引っ越したいです。黙って貸した仲介会社やオーナーも許せません。どうにかできませんか。

■オーナーらに説明義務 債務不履行で損賠も

A.  仮にその同じマンションの住人の方の話が本当だとしますと、自殺などの一般的に人が嫌悪すべき歴史的背景は、人が居住するうえで精神的苦痛を伴うものです。物件を借りるかどうかの判断に重要な影響を及ぼすため、オーナーや不動産仲介会社には入居希望者に「事故物件」であることを説明すべき義務があります。これまでの裁判例では、少なくとも事故後2~3年程度は事故物件であることを説明すべきとされています。国土交通省が検討しているガイドラインでも、概ね3年とされているようです。本件でもオーナーらに説明義務違反があったといえるでしょう。
 そこで、まずはマンションから出て行く手立てを検討してみます。事故物件であることは、賃貸借契約に合致していない物件だといえそうですので、貸主の責任(担保責任)についての民法の規定に基づき、そのような物件には住めないと主張して、賃貸借契約を解除することが考えられます。また、借り主が個人であれば、不利益な事実の告知がなかったとして消費者契約法に基づく契約の取り消しも可能でしょう。
 一方で、契約を解除せずに適正賃料との差額について賠償を求めるのも一つの手法です。事故物件であることを知っていれば、現在の賃料では借りていなかったでしょうから、これまでに支払った賃料と適正賃料との差額を請求できるかもしれません。
 次に、事故物件であることを隠して貸した損害賠償責任の追及についてです。オーナーに対しては説明義務違反があったとして、債務不履行や不法行為に基づき損害賠償請求ができます。損害としては▽転居費用▽礼金▽仲介手数料▽保証料▽損害保険料一などが考えられます。また、説明義務違反は仲介会社にも認められますので、同様に損害賠償を求めることが可能です。
 以上のように、事故物件であるとの説明がなかった場合には、オーナーや仲介会社にさまざまな請求ができることになっています。まずは弁護士など専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

<回答・横藪達広弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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