行方不明の両親の不動産処分

Q. 4年前、両親が災害に遭い、今も行方不明のままです。両親はいくつか不動産を所有しており、その固定資産税や維持費用は私が肩代わりしてきました。ただ、その負担も年々、重くなっています。不動産を処分したいと考えていますが、名義は両親のままなのでどうにもできません。どうにかならないのでしょうか。

■「失踪宣告」申し立てれば自身が相続し可能に

A.  ご両親の安否が長らく分からないままで、精神的にも不安な日々を過ごされているのではないでしょうか。
 さて、民法には「失踪宣告」という制度があります。これは、行方不明になって生死の確認ができない人について、死亡したものとして取り扱うための手続です。通常、失踪宣告が認められるには、行方不明などで生死が分からない状態が7年間続いていることが必要となります。ただし、災害や船舶の沈没などの場合はその危難が去ってから1年間でよいとされています。
 このため、ご相談の件につきましても、失踪宣告の申立てができると考えられます。申立ては、ご両親の失踪前の住所を管轄する家庭裁判所に対して行います。裁判所が申立てを認めて失踪宣告がなされますと、災害終了時点をもって、ご両親は、法律上死亡したものとみなされます。その後、ご両親の財産について他の相続人と遺産分割協議を行ってあなたが相続すれば、不動産を自らの財産として処分することが可能になります。
 なお、2011年3月11日に発生した東日本大震災の行方不明者については、死亡診断書に代えて家族の陳述書などを市町村役場に提出すれば、死亡届が受理されていました。失踪宣告の申立てをしなくても、遺産を相続することができたことになります。
 安否が分からないのに死亡を前提とした手続を進めることには、いささかの抵抗があるかもしれません。しかしながら、ご自身が生活していくために必要なことであれば、ご両親にもきっとご理解いただけるのではないでしょうか。
 なお、失踪宣告後にご両親の生存が確認された場合、失踪宣告は取り消すことができます。宣告による効果もさかのぼってなくなります。また、死亡届の提出をした場合についても、同様に戸籍の訂正をすることができます。

<回答・小仲真介弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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