窃盗で半年間勾留 無罪に

Q. 窃盗事件で逮捕、起訴されていた私の夫に先日、1審の裁判所で無罪が言い渡されました。夫は「ぬれぎぬだ」と訴えていたので、一安心したのですが、夫は半年間にわたって警察署と拘置所に勾留され、会社員の職も失いました。国にどのような補償を求めることができますか。

■国からは刑事賠償 裁判費用も 拘束損失を金銭的に

A.  冤罪が晴れて本当によかったですね。ご本人やご家族のご心労はいかばかりだったかとお察し致します。無罪判決が確定した場合の国からの補償としては、刑事補償と裁判費用補償が考えられます。
 刑事捕償は、逮捕・勾留といった身体拘束による損失を金銭的に償う制度です。拘束された日数に応じて1日当たり1000円~1万2500円の補償金が支払われます。無罪判決をした裁判所に判決確定後3年以内に請求すれば受け取ることができます。
 1日当たりの補償金額は、拘束期間の長さ、本人が受けた財産的損失や精神的苦痛など一切の事情を考慮して裁判所が決めます。あなたの夫は半年間勾留され、会社員の職も失ったとのことですから、当時の給与明細などを証拠として提出し、判断材料にしてもらいましょう。
 次に、裁判費用補償とは、裁判のために必要となった費用を償う制度です。本人や弁護人が裁判に出頭するために必要となった旅費や日当、弁護人への報酬などが対象になります。弁護人が国選なら報酬などの自己負担はありませんが、本人が保釈されていて裁判に出頭するために旅費や日当が生じたような場合には、この制度を使うことができます。補償を受けるには、無罪を言い渡した裁判所に判決確定後6カ月以内に請求する必要があります。
 なお、この二つの補償とは別に、警察官や検察官から違法、不当な取り調べをされて精神的苦痛を受けたようなことがあれば、国家賠償請求訴訟を起こすことができます。もっとも、警察官や検察官の故意や過失の立証が必要ですので、ハードルは非常に高いでしょう。
ぬれぎぬを着せられたことによる有形無形の損害は、金銭で補い切れるものではないでしょう。それでも、最低限の補償は受けることはできますので、弁護士と相談して手続きを進めてください。

<回答・栗林亜紀子弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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