夫に「余命宣言」遺産相続への対策は?

Q. 私たち夫婦には子供はおらず、夫A名義の家に暮らしています。夫は末期がんであることが判明し、「余命宣告」も受けています。夫の父母はすでに亡くなっており、夫には兄B、姉Cがいます。夫には、居宅不動産以外にめぼしい財産はありません。何か対策をしておく必要はあるのでしょうか。

■配偶者と兄弟姉妹も対象 公正証書遺言作成を


A. ご相談の事例で、Aさんが亡くなられた場合、配偶者である相談者だけでなく、兄弟姉妹であるB、Cさんも相続人となります。この場合、配偶者が4分の3の相続権を持つことを前提に遺産分割協議を行う必要があります。
 ご相談者が居宅に住み続けたい場合は、この遺産分割協議で、居宅不動産を取得したほうがいいでしょう。そのためにはB、Cさんに不動産の評価額の8分の1ずつを現金で支払う代償分割という方法をとることになります。
 死亡保険金の受取人になっていて保険金でこれを工面できる場合や、ご自身の預金などがある場合は現金の工面が可能でしょう。しかし、工面できない場合、不動産をB、Cさんと共有する共有分割や、不動産を売却して代金を相続割合によって分ける換価分割の方法にならざるを得なくなります。
 このような事態になることを防ぐには、Aさんに、「全ての財産について妻○○に相続させる」という内容の遺言書を作成してもらうことが有効です。このような遺言書があれば、この不動産を含めた財産を取得できます。兄弟姉妹には遺留分がないため、このような遺言書があれば、BさんやCさんに金銭を支払う必要もありません。
 遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言のどちらでも作成することが可能ですが、作成にかかる紛争防止のために公正証書遺言によって作成されることをお勧めします。

〈回答・大西隆司弁護士(大阪弁護士会所属)〉

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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