父の遺言2通のうち 1通に封 どう対応?

Q. 先日、父(A)が他界し、母(B)と私(C)と弟(D)で父の財産を相続することになりました。自宅を片付けていた際、父の自筆証書遺言を2通発見しました。1通は全財産をBに遺贈するという内容(第1遺言)で、もう1通は封がしてあり封筒には遺言書と記載されています(第2遺言)。どう対応すればよいですか。

■まず家裁へ「検認」請求 手続きの中で開封を

A. 自筆での遺言の保管者は、その遺言について、法務局での保管制度が使われていない限り、相続の開始があったことを知った後、遅滞なく家庭裁判所へ「検認」の請求をしなければなりません。この手続は遺言書の状況を明確にし、確実に保存するための手続きです。2通とも検認の手続きが必要です。
 封がしてある遺言書は、家庭裁判所で相続人かその代理人の立ち合いの下で開封しなければなりません。そのため、第2遺言は検認の手続きの中で開封することが必要です。検認の請求を怠った場合や誤って開封した場合には、「過料」というの制裁があります。積極的に遺言書を隠匿した場合には、「相続欠格」というものにあたり相続権が失われますので注意が必要です。
 民法は、複数の遺言が同じことについて異なる内容を書いている場合、その部分について前の遺言を撤回したものとみなすとしています。つまり後の遺言が優先されるのです。
第2遺言の日付が第1遺言の日付より前の場合、例えば第2遺言がCまたはDに財産を譲る内容であったとしても、全財産をBに譲るとする後の第1遺言が優先されます。
 第2遺言の日付が後で、CまたはDに一定の財産を譲る内容であれば、その部分は第2遺言が優先されます。
第2遺言の内容も第1遺言の中の遺贈の部分も有効とするものであれば、原則として遺言執行者を選任し、その執行により遺言内容の実現が図られることとなります。
 なお、第2遺言の開封によっても、ご相談者が取得される財産が少なく遺言でも奪えない遺留分を下回る場合には、遺贈の事実を知ってから1年間は遺留分の部分に相当する金額の支払を求める「遺留分侵害額請求権」を行使することが可能です。この権利の行使を検討されるべきでしょう。

〈回答・大西隆司弁護士(大阪弁護士会所属)〉


※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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