ベランダでの喫煙 法的に止められる?

Q. 住んでいる分譲マンションで、しばしばタバコの煙がどこからか流れてきて部屋に入ってきます。隣か下の部屋の人がベランダでタバコを吸い、その煙が流れてきているようです。ベランダでの喫煙を規約では禁じていませんが、法的に何とかできないものでしょうか。

■マンション使用規則にない場合 損害賠償認めた例も

A. マンションのベランダは「共有部分」で、利用については管理規約などで規定することができます。マンションの購入者(区分所有者)は、それぞれの「専有部分」に接するベランダの専用使用権が認められており、日常的に使用できます。
 タバコの煙が喫煙者だけでなく、その周辺で煙を吸い込む人の健康にも悪影響を及ぼす恐れのあることは公知の事実です(健康増進法25条)。もしも喫煙者が、他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながらベランダでの喫煙を継続し、防止措置を何もしない場合、喫煙者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することもあり得ます。
 実際に、マンションの使用規則(管理規約よりも詳細なルールを定めたもの)がベランダでの喫煙を禁止していない場合でも、住んでいる部屋の真下に居住し、ベランダなどで喫煙を継続した住人に対する損害賠償請求を認めた裁判例もあります。
 このケースでは、住人がぜんそくでタバコの煙によって強いストレスを感じていることなどを直接真下の住人に伝え、ベランダでの喫煙をやめるよう告げました。また管理組合もベランダでの喫煙に関して回覧・掲示をしました。しかし住人はその後も配慮することなく、自室のベランダで喫煙を継続したという事案でした。裁判所はベランダで喫煙を継続したことが不法行為になると判断し、精神的な損害についての請求を認めました。
 この裁判例のように、再三の注意にもかかわらずベランダでの喫煙を継続するなどした場合、損害賠償請求が認められることがあります。とは言え、同じマンションでの近隣トラブルは避けたいものです。2018年7月に成立した改正健康増進法(いわゆる受動喫煙防止法)はマンションには適用されないものの、居住者同士が気持ちよく暮らせるよう、管理規約などでベランダでの喫煙に関するルールを定めて周知し、紛争を防ぐことが望ましいでしょう。

〈回答・砂川辰彦弁護士(大阪弁護士会所属)〉

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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