7年住んだ部屋 敷金から代金支払う必要ある?

Q. 7年住んだ賃貸アパートから引っ越すことになりました。大家さんが部屋をみて、タバコですすっぽくなったり、立てかけていた物の色が少しついた壁や天井をみて、入居時に預けた敷金から壁の張り替え代金を出すといいました。7年も住んでいたのに代金を支払う義務があるのでしょうか。

■想定される傷などなら不要 修繕経費 賃料に含む

A.  賃貸アパートを明け渡す際、借主はアパートを原状に回復して貸主に返還する義務があります。これを原状回復義務といいます。
 ただし、借りた時と全く同じ状態に修復する義務ということではありません。賃貸アパートを普通に使用していれば、壁紙が変色するなど傷や汚れが発生することは当然想定されています。そのため、想定される傷や汚れを修繕する必要経費分は通常、毎月支払う賃料に含まれているものです。
 それにもかかわらず、これらの修繕費用を借主が支払わばければならないとすると、予期しない特別の負担を強いられることになってしまいます。したがって、通常の使用で生じた賃貸物件内の傷や汚れ(通常損耗)について、借主が修繕費用を支払う義務はありません。
 質問のケースは、壁や天井がタバコですすっぽくなったり、立てかけていた物の色が少しついていたりするということですが、7年間住んでこのような状態ですので、通常損耗と考えられます。したがって、壁の張り替え費用を質問者が支払う義務はありません。
 ただし、借主が通常損耗の修繕費用を負担する特約がある場合、借主にとって一方的に不利益でなく不意打ちとならない内容であるなど、一定の条件を満たした場合には、通常損耗の修繕費用を支払う義務を負うことになると考えられています。
 なお、タバコによる変色や臭いは、賃貸の期間が短かったり汚れがひどかったりする場合には、通常の損耗を超えるものとして借主が修繕費用を負担しなければならないこともあります。これらの点は、国土交通省の「原状回復にかかるガイドライン」で示している原状回復義務の考え方が目安になります。  

〈回答・佐々木晋輔弁護士(大阪弁護士会所属)〉

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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