キャリーバッグに高齢者つまずき骨折。賠償請求は?
Q. 先日、商店街でビジネスマン風の男性が引いていたキャリーバッグに高齢者がつまずいて転び、手を骨折していました。男性は知らんぷりでどこかへ行きましたが、賠償請求など法的に何か対応を取ることはできたのでしょうか。
■注意義務違反でできる 通院費や慰謝料など
A. まず、骨折したことについて、不法行為に基づく損害賠償請求ができるかどうかを考えます。
民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。駅構内でキャリーバッグを使用したケースで、使用する人は他の歩行者を妨げたり、つまずいて転倒させたりすることがないよう注意すべき義務があるとした東京地裁の裁判例があります。
ご相談のケースは商店街でのトラブルですが、同様に人通りが多い場所なので、男性はこの注意義務に違反したといえるでしょう。また骨折は、生命身体の安全という法律上保護される利益を侵害したといええます。さらに、男性がキャリーバッグをぶつけた行為と骨折には因果関係があるといえるでしょう。
したがって、ご相談のケースでは男性に損害賠償を請求することができると考えられます。
次に、損害賠償の範囲、金額などについて考えます。ご相談のケースでは、「通常損害」としては通院費用、後遺症が残った場合の逸失利益などが考えられます。また、入通院に伴って生じる精神的損害としての慰謝料については、入通院の期間や日数にもよりますが請求できる可能性があります。
最後に、注意が必要な項目として、高齢者の方にも不注意があったと認定された場合には、過失相殺(民法722条)がなされ、損害賠償が減額される可能性があります。先ほど記した東京地裁の裁判例では、被害者の過失も認定され、25%減額されています。
※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。