子どもなしの夫婦の財産 妻に全額相続は

Q. 私は妻と2人暮らしで、子どもはいません。
妻とは趣味の旅行を一緒に楽しむなど、夫婦関係は良好です。
このままずっと一緒にいるつもりですが、もし私が先に死んだら、財産はすべて妻のものになるのでしょうか。私の両親は他界しており、兄と妹がいるだけです。

■「財産はすべて妻に」と遺言を

A. これは民法の相続の問題ですので、法律に沿って順に説明しましょう。
まず、配偶者は必ず相続人となります(民法890条)。そして配偶者以外の親族も、民法が規定する相続順位に従って相続人となります。第1順位が子どもです(民法887条1項)。子どもがいない場合は第2順位である父母などの尊属(民法889条1項1号)、尊属も先に亡くなっている場合には第3順位の兄弟姉妹が相続人になるのです(同項2号)。このため、あなたが亡くなった際の相続人は、奥様とあなたのお兄さん、妹さんの計3人となります。
 次に、この場合の法定相続分についてです。民法900条3号では、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1と定められています。従ってあなたの場合ですと遺言書を残さない限り、妻が4分の3、兄と妹がそれぞれ8分の1を法定相続することになります。
 もし、すべての遺言を妻に残したいとお考えであれば「財産はすべて妻に相続させる」という内容の遺言を残してください。こうしておけば、兄弟姉妹にあなたの遺産がわたることはありません。
 民法には、相続人に一定割合の相続を保証する「遺留分」の規定がありますが、兄弟姉妹は遺留分が認められていません(民法1042条)。このため、あなたの場合は遺言ですべての財産を奥様のものとしても、遺留分を侵害する問題は起きませんのでご安心ください。
 最後に遺言の方式について説明しましょう。よく用いられるものでは、自分で書く「自筆証書遺言」と、公証人に作ってもらう「公正証書遺言」があります。どちらでも構いませんが、書き方に決まりがありますので、公正証書遺言の方が無難です。自筆証書遺言を作る場合には間違いのないよう弁護士にアドバイスを求めることをお勧めします。平成31年1月13日から自筆証書遺言の方式のルールが変わり、令和2年7月10日から法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度も始まりました。自筆証書遺言も利用しやすくなりましたので、この機会に、是非、お近くの弁護士会にも気軽にご相談ください。
    

 <回答・嶋田修一弁護士(大阪弁護士会所属)>


※記事内容は掲載日時点のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

ページトップへ
ページトップへ