外国籍会員の調停委員任命を求める会長声明

外国籍会員の調停委員任命を求める会長声明

 大阪家庭裁判所から依頼を受け、当会が2015年(平成27年)10月1日に行った韓国籍の当会会員2名の推薦に対し、同家庭裁判所は、同年11月4日付で最高裁判所に当該会員の任命上申を行わない旨の通知をした。拒絶の理由は、調停といえども公権力の行使であり、国家意思の形成に関与すること等の理由から、調停委員には日本国籍を有する者と解することが相当であるというものである。当会は、これまでも外国籍の会員を家事調停委員に推薦したが、いずれも同様の理由により任命上申を拒絶されており、極めて遺憾である。
 そもそも法令上、外国籍の者が調停委員になることができない旨の規定はない。また、外国籍の者が一定の公職に就くことが制限されることがあるとしても、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わるか否かという抽象的な基準により、すべての公務員について、その具体的な職務内容を問題とすることなく、日本国籍を有するか否かにより差別的取扱いを行うべきではない。現に過去には日本国籍ではない当会会員を調停委員として任命した実例もある。
 さらに、家事調停制度は、市民間の家事の紛争を当事者の話合いに基づき解決する制度であり、家事調停委員の役割は、当事者の互譲を支援し、当事者の合意に基づく紛争解決を支援することにあり、外国籍の者が家事調停委員に就任することが国民主権原理に反するとは考えられない。そして、多民族・多文化共生社会の形成の視点からすれば、国籍の有無にかかわらず、家事調停委員の就任を認めることは当然の要請と考えられ、調停委員の任命においても多様性の尊重が求められる。
 2014年(平成26年)8月28日の国連人権差別撤廃委員会の総括所見においても、「委員会はとりわけ、家庭裁判所における調停委員として行動する能力を有する日本国籍でない者を排除するとの締結国の立場及び継続する実務について懸念する。」とされ、「委員会は、締結国に対し、能力を有する日本国籍でない者が家庭裁判所における調停委員として行動することを認めるように、その立場を見直すことを勧告する。」とされている。
 以上のとおり、調停委員について、日本国籍を有しないことのみを理由として任命上申を拒絶することは、憲法第14条に違反するものと言わざるを得ない。
 よって、当会は、大阪家庭裁判所に対して、このような事態を繰り返さないことを強く求めるものである。

2016年(平成28年)3月24日
   大阪弁護士会      
   会長 松 葉 知 幸

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