「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に関する意見書

「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に関する意見書(全文)

 「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に関する意見書(骨子)

2017年(平成29年)2月7日


第1 「2 成年後見制度利用促進に当たっての基本的な考え方及び目標等」について
 1 利用促進の前提となる「十分に利用されていない」原因・要因分析の欠如
 [意見]
  基本計画案の策定においては,まず,成年後見制度の利用が十分になされていない原因・要因の分析,その前提となる実態調査を早急に行うことを盛り込むべきである。


 2 本人の意思決定支援や身上の保護等の福祉的な観点の重視という「基本的考え方」が「今後の施策の目標」に結びついていない
 [意見]
  基本計画の案の「今後の施策の目標」においては,「基本的考え方」に基づき,自己決定権を尊重し意思決定支援を進めるための成年後見制度の制度改善・運用改善についての具体的見直しを行うこと,身上の保護の充実のための制度改善・運用改善について具体的見直しを行うこと,を盛り込むべきである。

   
 3 利用促進の鍵となる「後見制度の社会化」を進めるための市町村等の責務の抜本的強化が打ち出されていない
 -市町村長申立の抜本強化,後見人報酬の経済的援助の財源確保,市民後見人の育成基盤の整備-
 [意見]
  基本計画の案においては,成年後見制度の利用促進のために市町村等が果たすべき公的責務とされている以下の3点につき,抜本的な強化をはかるため、人的・財政的な改善策の具体的立案をはかることを盛り込むべきである。
  ・市町村長申立が低調な市町村の具体的な改善策
  ・後見人等への報酬助成制度拡充のための抜本的な財源確保策
  ・市民後見人等の育成策の低調な地域での具体的な改善策

  
第2 「3 成年後見制度の利用の促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策」について
 1「(1)利用者がメリットを実感できる制度・運用への改善」について
  ① 高齢者と障害者の特性に応じた意思決定支援の在り方
 [意見]
  後見人等が代理行為を行うについて,本人の意思決定支援を行い,自己決定した結果に基づく代理行為を行うこと,及び,本人が意思決定できなかった場合にも本人の意思及び選好を尊重した代理行為を行うこと、に関する具体的な行動指針を策定すべきである。


  ② 後見人の選任における配慮
 [意見]
  家庭裁判所において適切な後見人を選任できるための施策として,地域連携ネットワークや中核機関が本人を取り巻く支援の状況等の適切な情報提供がなされることを保障するための具体的な方策を検討すべきであるとともに、その適切な情報に基づき適切な後見人を選任できる仕組みの態勢整備を進めるべきである。


  ③利用開始後における柔軟な対応
 [意見]
  本人等と後見人との間に信頼関係が形成されず,本人の権利擁護を十分に図ることができないような場合,現行成年後見制度の下においても,適格な後任者に交代できるような柔軟な運用を可能とする方策については,あくまでも本人との信頼関係や本人自己決定の尊重や身上の保護の観点に基づき判断すべきである。
  また,制度利用の必要性が解消した場合に利用を終了できるように,制度自体の見直し及び柔軟な制度運用について早急に検討すべきである。


  ④成年後見制度の利用開始の有無を判断する際に提出される診断書等の在り方
 [意見]
 本人の状況に応じた適切な類型の判断がなされるため,本人の身体及び精神の状態を的確に示すような本人の生活状況等に関する情報が適切に提供されることは必要であるが,これを医師の診断書作成にあたって情報提供する手法として検討することは適切ではなく,診断書とは別に,社会的・福祉的情報として裁判所に情報提供され,これを診断書とともに裁判所が総合考慮して判断するという手法が検討されるべきである。


2「(2)権利擁護支援のネットワークづくり」について
 [意見]
  権利擁護支援の地域連携ネットワークを構築するため,中核機関を設置することは賛成であるが,その内容においては,以下の点に留意すべきである。
  (1) 地域連携ネットワークには、中核機関の設置が必須であり、その責任において行われ、地域関係機関や住民がそれぞれの役割を果たすことによって形成されていくものである、という位置づけを明確にすること。
  (2) 地域連携ネットワークと中核機関が担うべき具体的機能については、ア)広報機能,イ)相談機能,ウ)成年後見制度利用促進機能,エ)後見人支援機能,及びオ)不正防止効果のそれぞれ毎に異なるものであるから、それぞれにおいて果たすべき役割を明確にすること。
  (3) 市民後見人の育成については,養成から活動支援まで一貫した支援がなされることが重要であり,これを支える体制を中核機関が担い,弁護士・司法書士・社会福祉士の専門職が関与することを明示すること。
  (4) 法人後見については,法人の適格性についての基準を明確にし,その指導・評価機能を中核機関が担うようにすべきであること。
  (5) 親族後見人の支援については、家庭裁判所と中核機関において情報共有をはかり、希望者のみではなく全ての親族後見人を対象とした支援策を展開できるように必要な法整備をはかること。
  (6) 中核機関の運営主体は市町村が担うべきものであることを明確にすること。


3「(3)不正防止の徹底と利用しやすさとの調和-安心して利用できる環境整備-」について
  ①金融機関による新たな取組
 [意見]
  不正事案の発生を未然に抑止する方策としては,金融機関の協力を得て,定期預金や一定額以上の出金については裁判所の指示書がなければ出金できないこととする等の仕組みの導入こそ検討すべきである。
 

  ②親族後見人の成年後見制度への理解促進による不正行為の防止
 [意見]
  法律専門職団体の親族後見人への指導・助言や家裁への不適切情報の提供等の連携は,中核機関の親族後見人への支援及び監督機能の中で,法律専門職団体として関与する一環として担うべきである。

  ③家庭裁判所と専門職団体等との連携
 [意見]
  親族後見人の不正防止や適切な支援・監督については,金融機関の協力とともに,最高裁判所と各地の家庭裁判所が,中核機関を担う地方自治体と連携して態勢整備をはかっていくことが相当であり,専門職団体等における対応強化策についても,家庭裁判所と各専門職団体との連携した取り組みの中で取り組まれるべきである

  ④移行型任意後見契約における不正防止
 [意見]
  移行型任意後見契約における不正防止のためには,任意後見監督人選任の時期を的確に確知するための地域連携ネットワークでのチームによる見守りの実効化だけでなく,任意代理契約における不当に広範な代理権設定を抑制するため,公証人に契約内容の是正を促し適切でない契約については作成を拒否できる権限を付与するなどの法改正も検討すべきであることを明記すべきである。


4「(4)制度の利用促進に向けて取り組むべきその他の事項」について
  ①任意後見制度の利用促進
 [意見]
  本人の自己決定の尊重の観点から,任意後見制度の利用促進を図るという内閣府案の方針には賛成である。
  しかし,利用促進のためには,単に自己決定の尊重に適うという抽象的なメリットでは足りないのであり,不正防止を踏まえた上で,具体的にどのような形で不安に応えられるのかを示す必要があり,それをもって周知する努力をすべきことを明示すべきである。


  ②制度の利用に係る費用等に係る助成
 [意見]
  成年後見制度利用支援事業については,市町村や介護保険被保険者間における財政基盤の相違にかかわらず,制度利用に係る費用等が助成される仕組みと財源の確保を行うべきであり,かつ,制度利用の要件等の統一化が必要である。
  一方,寄付を活用した助成制度の創設・拡充などの取組を促進することは,本来の公的な責務を転化するものであり,基本計画に盛り込むことは反対である。


  ③市町村による成年後見制度利用促進基本計画の策定
 [意見]
  市町村による基本計画の策定については,前述のように,地域連携ネットワークの構築における中核機関の重要な位置づけに照らし,市町村の責務で設置する中核機関の重要な役割,位置づけを柱にした基本計画を策定することが必要である。


5「(5)国,地方公共団体,関係団体等の役割」について
 ①市町村について
 [意見]
  (1) 市町村は,地域連携ネットワークの中核機関の設置・運営主体として責任ある役割を果たすことを明記すべきである。 
  (2) 市町村長申立の活性化に向けて,市町村長申立件数につき,人口比による数値目標を設定した市町村基本計画を策定することを義務づけるべきである。


 ②都道府県について
 [意見]
  (1) 都道府県が,広域的な見地から,後見等の担い手の確保等に関する施策等の課題に取り組むにあたっては,先進的に実施されているモデルを参考にするなどして実効性のある取組にすべきことを盛り込むべきである。
  (2) 都道府県単位もしくは家庭裁判所単位で設置が検討される「専門支援機関」について,その具体的内容や権限が不明確であるので,関係機関相互の役割分担も含めて,具体的で明確な位置づけをすべきである。


 ③国について
 [意見]
  (1) 国の役割として,制度の利用に係る費用における財源確保ともに,家庭裁判所の人的・物的体制の充実強化が,予算的裏付けをもってなされなければならないことを,基本計画に明記すべきである。
  (2) 家庭裁判所の支部,出張所の体制整備も盛り込むべきである。

 ④関係団体について
 [意見]
  弁護士会,司法書士会(リーガルサポート),社会福祉士会の3つの専門職団体が,中核機関を中心として構築される地域連携ネットワークにおける様々な場面や支援において積極的な役割が期待されることは賛成であり,また,内閣府案の示す法律関係者団体に期待される役割についても賛成であり,当会も,そのためにこれまでの専門的知識と長年の経験の蓄積を生かして,大阪家庭裁判所,大阪府や各市町村,リーガル・サポート大阪支部,大阪社会福祉士会と連携して,これに尽力する所存である。

 
6「(6)成年被後見人等の医療,介護に係る意思決定が困難な者への支援等の検討」について
 [意見]
 内閣府案の「医療や福祉関係者等の意見を得ながら,医療・介護等の現場において関係者が対応を行う際に参考となるような考え方を,指針の作成等を通じて社会に提示し,成年後見人等の具体的な役割等が明らかになっていくよう,できる限り速やかに検討を進めるべきである。」との方向性に賛成する。

以上


※こちらは「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に関する意見書の骨子です。全文は、ページ上部にあるPDF書類を参照ください。

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