外国籍会員の調停委員任命を求める会長声明

外国籍会員の調停委員任命を求める会長声明

 大阪家庭裁判所から家事調停委員の推薦の依頼を受け、当会が2016年(平成28年)9月27日に行った韓国籍の当会会員1名の推薦に対し、同家庭裁判所は、同年11月11日付で最高裁判所に当該会員の任命上申を行わない旨の通知をした。拒絶の理由は、調停といえども公権力の行使であり、国家意思の形成に関与すること等の理由から、調停委員には日本国籍を有する者と解することが相当であるというものである。当会は、これまでも外国籍の会員を家事調停委員に推薦したが、いずれも同様の理由により任命上申を拒絶されており、今回を含めて7度も繰り返されており極めて遺憾であり、これに強く抗議するものである。
 そもそも民事調停委員及び家事調停委員規則第1条は、日本国籍を有することを任命の要件としておらず、外国籍の者が調停委員になることができない旨の規定はない。また、「弁護士となる資格を有する者」を一つの対象として選考することになっているが、弁護士資格にはもともと国籍条項はなく、司法修習生の採用選考要項からも国籍要件は撤廃されている。外国籍の者が一定の公職に就くことが制限されることがあるとしても、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わるか否かという抽象的な基準により、すべての公務員について、その具体的な職務内容を問題とすることなく、日本国籍を有するか否かにより差別的取扱いを行うべきではない。現に過去には日本国籍ではない当会会員を調停委員として任命した実例もある。
 さらに、家事調停制度は、市民間の家事の紛争を当事者の話合いに基づき解決する制度であり、家事調停委員の役割は、当事者の互譲を支援し、当事者の合意に基づく紛争解決を支援することにあり、外国籍の者が家事調停委員に就任することが国民主権原理に反するとは考えられない。近畿弁護士会連合会外国籍の調停委員採用を求めるプロジェクトチームが、平成27年度と平成28年度、近畿6府県の各弁護士会所属の弁護士調停委員と意見交換会を実施したが、調停委員の職務が公権力の行使であると述べた方は皆無であった。そして、多民族・多文化共生社会の形成の視点や司法サービスの充実の観点からも、外国籍の住民が多数居住する大阪においては、国籍の有無にかかわらず家事調停委員の就任を認めることは当然の要請と考えられ、調停委員の任命においても多様性の尊重が求められる。
 2014年(平成26年)8月28日の国連人権差別撤廃委員会の総括所見においても、「委員会はとりわけ、家庭裁判所における調停委員として行動する能力を有する日本国籍でない者を排除するとの締結国の立場及び継続する実務について懸念する。」とされ、「委員会は、締結国に対し、能力を有する日本国籍でない者が家庭裁判所における調停委員として行動することを認めるように、その立場を見直すことを勧告する。」とされている。
 以上のとおり、調停委員について、日本国籍を有しないことのみを理由として任命上申を拒絶することは、憲法第14条に違反するものと言わざるを得ない。
 よって、当会は、最高裁判所及び大阪家庭裁判所に対して、このような事態を繰り返さないことを強く求めるものである。

2017年(平成29年)3月14日
  大阪弁護士会      
  会長 山 口 健 一

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