共謀罪法案の閣議決定に強く抗議する会長声明

共謀罪法案の閣議決定に強く抗議する会長声明

 当会は、昨年9月と今年2月に共謀罪法案の国会提出に反対する会長声明を発したが、一昨日、共謀罪法案が閣議決定されたことに対して、改めて強く抗議する。
 政府は、共謀罪法案について、「テロ等準備罪」としてテロ対策を前面に打ち出しているが、当初の法案には「テロ」などの文言はなく、法案の最終段階になって、急遽「テロリズム集団」の文言が加えられたにすぎない。この一事をもってしても、共謀罪法案がテロ対策のためのものであるとの説明には疑問が拭えない。
 また、政府が掲げた「現行法上適確に対処できないと考えられるテロ事案」の3事例については、2事例(ハイジャックによるテロ、化学薬品によるテロ)は現行法で対処可能であり、1事例(サイバーテロ)も現行法に未遂罪を加えれば対処できるものであり、共謀罪法案を創設する理由とはなっていない。
 さらに、政府は、今回の共謀罪法案は過去3回も廃案になった共謀罪法案と異なると説明しているが、法務大臣の説明によっても、一般市民が「組織的犯罪集団」とされかねない懸念が払拭されておらず、また、「準備行為」自体は適法行為でも共謀罪の対象となるのであって、「準備行為」の要件は犯罪限定機能を果たしていない。
 国会審議を見ると、新たに共謀罪を277も新設する必要性について、政府は十分に説明できていない。しかも、政府は、これまで、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を批准するには長期4年以上の犯罪について共謀罪の新設が必要だとしてきたが、今回の法案では、長期4年以上の犯罪全てではなく、277の犯罪についてのみ共謀罪を新設していることからして、政府の従前の説明は破綻したことが明らかとなっているし、そもそも、この国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約はテロ対策に関わる条約ではない。しかるに、これらの点について、政府から納得のできるような説明もなされていない。
 共謀罪は、予備にも至らない共謀(「計画」)段階で犯罪の成立を認めるものであり、これまでの刑事法制のあり方を大きく変えるものである。また、共謀罪は、必然的に盗聴等を手段とする探知型捜査を前提とするものであり、そのため、その導入は我々市民生活が様々な手段をもって監視されることに繋がるのであって、市民の私的領域における自由を大きく制約するものである。
 以上の次第で、当会は、過去3回も廃案になった共謀罪の問題点が何ら解消されていないばかりか、これまでの国会審議でも立法の必要性が十分に説明できておらず、また、市民生活に大きな脅威となる共謀罪法案の閣議決定に強く抗議するものである。


2017年(平成29年)3月23日
  大阪弁護士会      
  会長 山 口 健 一

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