司法修習生に対する給付制度を新設する裁判所法一部改正法成立にあたっての会長声明

司法修習生に対する給付制度を新設する裁判所法一部改正法成立にあたっての会長声明

 本日、司法修習生に対する給付制度を新設する等の裁判所法一部改正法(以下、「本法」という。)が成立した。これにより、第71期以後の司法修習生には、国から基本給付金月額13万5,000円その他が支給されることとなる。
 大阪弁護士会としても、2010年4月から、司法修習費用給費制緊急対策大阪本部を設置し、7年余にもわたって継続的に給費の実現を求めて活動してきたもので、裁判所法の改正という成果に結びついたことを喜ばしく思う。給費の実現に向けて、国会議員、関係省庁の方々をはじめ、市民の方々、マスコミ関係者、関係団体の方々、多くの方にご理解ご協力いただいたことに深く感謝する。
 ところで、司法修習は、日本国憲法のもとで、1947年から現在まで、国による法曹の統一的養成制度として行われてきた。三権分立の一翼を担う司法に携わらんとする人材を統一的に修習する意義は、立憲主義の基礎を共に学び、法の支配を実現する司法的なインフラの担い手を養成するものであり、極めて高い。実際、その統一的な修習を通じ、裁判官、検察官、弁護士という法曹三者が育成され、共通の土壌を培ってきた。法曹資格取得のために司法修習を義務づける理由は、立憲主義の価値を共有し、その実においても法曹としての土台を築くために欠くことのできない研鑽の機会だからである。それゆえに、司法修習生に対しては修習専念義務を課す一方で、法曹養成という国の責務として、専念に必要な費用については、国から支給されてきた(給費制)。
 しかし、2011年11月から給費制が廃止され、新65期司法修習生以降は無給となり、貸与制が導入された。この制度のもとでは、生活に必要な費用を貸与金(借り入れ)によってまかなうこととなり、経済的な不安を拭えず、修習に専念する環境としては弊害も生じていた。
 また、給費制の廃止と軌を一にするように、2003年には5万人超いた司法試験出願者が、本年出願者速報値で6716人と激減しているように、法曹志望者の著しい減少という現象が生じている。司法権を担う有為な人材を確保できなくなるような事態は、まさに国家にとって危機的な状況であるといえる。
 本法が、給費制廃止を一因として生じた弊害を是正し、司法を担う人材の確保の推進を図る第一歩となることを期待する。一方で、給付金額を含め、今回の法改正が十分な制度設計となりえているかについては、検証を継続する必要がある。また、司法全体を見れば若手法曹、とりわけ司法修習を無給・貸与で終えた世代に対する支援・施策のあり方についても今後の重要な検討課題である。
 当会は、今後も、法曹養成の過程における司法修習の意義の大きさに鑑み、裁判所・検察庁とも連携し修習内容の充実を図るとともに、国に対しては、実質的にも経済的な不安から修習の実が損なわれることのないように、司法修習の本質に即した制度の充実・発展を求める所存である。

2017年(平成29年)4月19日
  大阪弁護士会      
  会長 小 原 正 敏

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