いわゆる共謀罪法案の審議不充分なままでの採決に抗議する会長声明

いわゆる共謀罪法案の審議不充分なままでの採決に抗議する会長声明

 当会は、昨年9月と本年2月にいわゆる共謀罪法案(以下「共謀罪法案」という。)の国会提出に反対する会長声明を発し、3月には閣議決定に抗議する会長声明を発している。今般、本年5月23日に共謀罪法案が衆議院での審議が充分に尽くされていないにもかかわらず採決されたことに対して抗議する。
 首相は、同法案について、一般人は処罰の対象にならないと説明しているが、原発反対運動や基地建設反対運動などの計画が組織的威力業務妨害罪として対象犯罪とされかねない上、商標法違反及び著作権法違反や所得税法違反など、「一般人」が業務の遂行として行うことがあり得る行為類型までもが対象犯罪として含まれている。そして、同法案の条文には一般人を対象としないなどという文言はなく、上記行為類型についても、「計画」と「準備行為」があれば、条文解釈上、誰しもが処罰対象となり得る規定となっている。また、一般人が処罰対象となるのかについて、国会審議における政府答弁は二転三転し、法務大臣でさえ明確な説明ができていない。これでは、誰がどのような犯罪で処罰されるのかが予め判然としておらず、刑罰法規の大前提たる罪刑法定主義の観点から極めて問題である。
 また、同法案には、「テロリズム集団」という文言が規定されているが、「テロリズム」の定義について、政府は、最終的には例示であるために正確に定義する必要はないと答弁し、「テロリズム集団」の定義自体が不明確なままである。加えて、TOC条約との関係についても、政府は充分な説明を尽くしたとは言い難い。
 以上のとおり、共謀罪法案については、罪刑法定主義の観点から大きな問題がある上、テロ対策を理由とする立法目的自体にも疑義がある。そもそも、同法案の中身については、充分な国会審議が尽くされているとは到底言えず、私たち市民の理解も不充分と言わざるを得ない。実際、最新の調査によれば、政府の説明が充分だと思わないという市民が7割以上も存在する。にもかかわらず、単に審議に一定の時間が費やされたからといって、審議が尽くされないまま拙速に採決されることは決して許されない。なお、国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏から、共謀罪法案はプライバシーや表現の自由を制約するおそれがあるとの懸念を示す書簡が安倍首相宛てに送付されている。
 よって、当会は、過去3回も廃案になった共謀罪の問題点が何ら解消されておらず、国会審議も不充分なままでの衆議院での共謀罪法案の採決に抗議する。

2017年(平成29年)5月24日
  大阪弁護士会      
  会長 小 原 正 敏

ページトップへ