いわゆる共謀罪法案の成立に対して強く抗議する会長声明

いわゆる共謀罪法案の成立に対して強く抗議する会長声明

 昨日、いわゆる共謀罪法案(以下「共謀罪法案」という。)が、参議院本会議で強行採決され、成立した。当会は、共謀罪法案の成立に対して強く抗議する。
 共謀罪法案は、その処罰対象について誰がどのような犯罪で処罰されるのか判然とせず、市民の自由や人権が広く侵害されるおそれがあるといわざるをえない。共謀罪法案が成立したことは、罪刑法定主義(憲法31条)の観点から極めて問題である。
 この点につき、政府答弁は二転三転し、審議が充分尽くされることなく、共謀罪法案は衆議院において採決された。当会は、本年5月24日に会長声明を発出し、かかる審議不充分なままでの衆議院における採決に抗議した。同様の抗議は、日本弁護士連合会及び多くの単位弁護士会からも発出されている。
 しかるに、参議院の法務委員会では、衆議院での審議に遙かに満たない時間しか審議されず、しかも、同委員会での審議を途中で打ち切り、中間報告という例外規定を用い、共謀罪は、同委員会での採決を行わずに参議院で採決された。
 本来、法案は、法務委員会において審議・採決され、その後、参議院本会議において採決されるのが原則である。ただ、例外的に、委員会で審査中の案件について「特に必要があるとき」は、中間報告を求めることができ(国会法第56条の3第1項)、議院が「特に緊急を要すると認めたとき」は、委員会の審査に期限を附けまたは議院の本会議において審議することができる(同条第2項)とされている。しかし、共謀罪法案については、参議院法務委員会で審議が続けられていたのであって、中間報告を求めるべき「特に必要があ」ったとはいえず、また、今国会の会期が本年は6月18日までとされていることからすれば、同月15日の早朝段階で採決するだけの「特に緊急を要する」事情が存したとは認められない。
 このように例外規定を恣意的に用いて審議を打ち切り、審議不充分なまま採決を強行することは、議会制民主主義の否定としかいいようがない。
 よって、当会は、過去3回も廃案になりながら、問題点が何ら解消されないまま、充分な審議を経ずして、中間報告という例外規定まで用いて採決が強行された共謀罪法案の成立に対して、強く抗議するとともに、成立した法律の廃止に向けた取組を全力で行う所存である。

2017年(平成29年)6月16日
  大阪弁護士会      
  会長 小 原 正 敏

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