死刑執行に抗議する会長声明

死刑執行に抗議する会長声明

 本日、東京拘置所において2名の死刑が執行された。今回の執行は、本年8月に上川陽子法務大臣が就任してから初めての執行であるが、同法務大臣のもとでは、2015年6月25日にも1名の執行がなされており、あわせて2回目の執行となり、第二次安倍内閣以降12回目、合計21名の執行がなされたことになる。
 今回執行された者のうち1名は、犯行当時19歳の少年であり、犯行当時少年であった者に対し死刑が執行されたのは、1997年8月1日に執行された永山則夫元死刑囚以来20年ぶりとなる。
 また、今回執行された者はいずれも再審請求中であったが、これは本年7月13日に執行された者と同じく、再審請求について裁判所の判断を待たずに、法務省が再審開始決定はないと判断して死刑執行をしたことになる。従前は、再審請求中は裁判所の判断がなされるまでは死刑執行が回避されるという傾向にあり、2014年3月27日には、無罪を訴えていた袴田巌氏に対し、静岡地方裁判所が再審の開始と死刑及び拘置の執行停止を認め、逮捕から47年ぶりに釈放されたという事例もある。再審請求中の死刑執行は極めて異例であり、司法の判断を軽視するもので、およそ是認できない。
 当会は、会内に死刑廃止検討プロジェクトチームを設置し、死刑のない社会を目指してどのような活動を行うべきかについて議論を重ねるとともに、死刑の執行方法に関するDVDの作成、シンポジウムの開催、ブックレットの作成などを通じて、市民とともに死刑制度の問題点を検討し、死刑制度について全社会的議論を呼びかけてきた。また、かねてより再三にわたり、政府に対し、死刑執行の停止と、死刑に関する情報の公開を求めてきた。しかし、この間、刑場の状況や死刑確定者の処遇について一部公開されたものの、未だ、十分な情報の公開がなされたとはいえず、死刑制度について全社会的議論を行う場すら設けられていない。
 日弁連は、死刑制度を存続させれば死刑判決を下すか否かを人が判断する以上えん罪による処刑を避けることができないこと等を理由に、昨年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年までに死刑制度を廃止すること等を国に求めた。
 死刑廃止は、国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止し、または停止している国は141ヶ国となっており、全世界の3分の2以上の国において死刑の執行はなされていない。2014年7月23日には、国連人権(自由権)規約委員会が日本政府に対し、「死刑の廃止を十分に考慮すること」との勧告を行っている。さらに、2016年12月19日、国連総会において、すべての死刑存置国に対し、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議が採択されている。政府は、かかる勧告や決議を無視して執行したことになる。
 当会は、政府に対し、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請するのみならず、死刑制度の廃止目標を設定し、これに向けた全社会的議論の喚起と刑罰制度全体の見直しを行うことを求めるものである。

2017年(平成29年)12月19日
  大阪弁護士会      
  会長 小 原 正 敏

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