「消費者契約法の一部を改正する法律案」に対する会長声明

「消費者契約法の一部を改正する法律案」に対する会長声明

 2018年(平成30年)3月2日、消費者契約法の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)について閣議決定がなされた。
本改正案は、消費者契約法の改正法案の速やかな策定と国会への提出を求めた内閣府消費者委員会の2017年(平成29年)8月8日付答申書(以下「委員会答申」という。)に沿っている点では評価できるが、必ずしも本答申の趣旨を十分に踏まえたものではない。
 当会は、2017年(平成29年)7月25日に「消費者契約法改正に関する意見書」を、同年12月7日に「消費者契約法専門調査会報告書に関する意見書」をそれぞれ公表しているところ、本改正案の審議にあたっては、下記のとおり、委員会答申及び当会の意見の趣旨を十分に踏まえた審議・改正をされるよう求める。



1 本改正案においては、委員会答申において喫緊の課題であるとして付言され、当会もその導入を強く求めてきた高齢者や若年者などの判断力の不足等に乗じてこれらの者に対して過大な不利益を生じさせる契約の勧誘行為が行われた場合(非作出型つけ込み勧誘行為)に対する取消権の創設規定が設けられていない。非作出型つけ込み勧誘行為に対する取消権を付与すべき規定を設けるべきである。
2 委員会答申を受けて困惑類型として設けられた2つの勧誘行為のいずれについても、「社会生活上の経験に乏しいことから」が付されたことから、救済対象のほとんどが若年者に限定されかねず、高齢者等をその対象から除外してしまうことにもなりかねない。この文言は削除するか、「判断力又は社会生活上の経験が乏しいこと」という修正がされるべきである。
 さらに上記の文言に加えて、取消し得るのは「『過大な』不安を抱いていることを知りながら」勧誘行為をおこなった場合等に限られているが、これでは救済対象が限定され、本来救済すべきものが救済されなくなることになりかねない。「過大な」等の限定要件は削除すべきである。
3 委員会答申では、消費者契約法9条1号の「平均的な損害の額」に関して、消費者の立証責任軽減のために推定規定の導入が提言されていたが、本改正案にはこの推定規定が含まれていない。この委員会答申は、消費者側が「平均的な損害」の主張立証責任を負うとの最高裁判決を前提としつつ、事業者側が立証のための必要な資料を保有していることが一般的であることを踏まえて提言されたものであり、法9条1号の規定を実効化するために必要不可欠なものである。この推定規定を立法化しないということは、委員会答申の趣旨を大きく損なうものと言わざるを得ない。推定規定を導入すべきである。
2018年(平成30年)3月7日
   大阪弁護士会      
   会長 小 原 正 敏

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