滋賀県彦根市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明

滋賀県彦根市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明

 本年4月11日に、滋賀県彦根市において、男性が拳銃で発砲されて死亡するという痛ましい事件が発生した。この件について、被疑者とされる少年が逮捕されてから以降もなお、週刊誌等一部の報道機関は、被疑者とされる少年の氏名や顔写真等を掲載している。
 しかしながら、少年法は、少年の健全な育成(第1条)という目的達成のために、「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と規定している(第61条)。報道により少年の実名等を明らかにすることが、未だ成長発達の途上にあり可塑性を有する少年の立ち直りを阻害することになるからである。また、国際的に見ても、子どもの権利条約第40条第2項は、犯罪を行ったとされる子どもに対する手続のすべての段階における子どものプライバシーの尊重を保障しており、少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)も、第8条において、少年のプライバシーの権利があらゆる段階で尊重されなければならず、原則として少年の特定に結びつきうるいかなる情報も公開してはならないものとしている。今回の実名等報道は、これらの法律や国際規範に違反する違法なものである。インターネットサービスの普及により、報道された実名等が半永久的に公開され続けてしまう現代社会においては、このような報道が行われた場合の少年の健全育成に与える悪影響は、一層甚大なものとなる。
 当会はこれまでにも、少年事件の実名等報道について、各報道機関に対して、少年法等を遵守した報道をするよう繰り返し要請してきた。
 そうであるにもかかわらず、今回の実名等報道がなされたことは極めて遺憾であり、当会は、実名等報道を行った週刊誌等一部の報道機関に対して、厳重に抗議するとともに、あらためて国際規範及び法律を遵守するよう強く要請するものである。

2018年(平成30年)4月24日
   大阪弁護士会      
   会長 竹 岡  富 美 男

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